用語に関するノート 2

ミネルヴァのフクロウ

  ローマ神話における知恵や英知、洞察力の女神ミネルヴァは、ギリシア神話ではアテナエに相当する。
  ミネルヴァの肩には知性や英知の象徴としてフクロウが止まっている。

  フクロウは夜行性で、通常人が活動する昼間は眼を閉じて眠っている。夜闇が近づく夕暮れになると、フクロウは眼を開けて羽ばたき始める。そして、夜の闇に飛び立っていく。

  それは、知性とか知恵、英知、洞察力や思考力を意味するものだという。つまり最盛期を過ぎて衰えが目立つようなときになって、人はようやく知恵や洞察力を獲得するものだということらしい。

  ドイツの哲学者、ヘーゲルは「ミネルヴァのフクロウは夕暮れに羽ばたく」と述べている。
  この言葉は、歴史主義的で総体主義的な認識論の方法論を示すものだという。
  認識の対象となる存在を総体的=体系的に認識できるようになるのは、その存在が十分に成長・発展して、むしろ衰滅へと向かい始める(晩期の)局面だというのだ。
  そのとき、存在自体の内的な体系性が外部から観察・分析できるほどに成熟しているというのだ。
  それと並行して、認識する人間の側も知的に成長し成熟し、肉体的には下り坂に向かう頃だという皮肉も込められているようにも思える。