14世紀半ばの地中海の状況

  この絵地図は、14世紀半ばの地中海の地政学的状況を略示する。
  コンスタティノポリスを支配していたラテン帝国は覆されてビザンツ帝国が復活したが、その版図はかなり小さくなっている。その対岸の小アジア北西部にはオスマントゥルコが勃興し、急速に膨張を始め、ダルダネルス海峡を越えてバルカン半島に拠点を築き始めた。
  レヴァント地方では、マムルーク王朝太守軍の侵攻で十字軍侯領はほとんど崩壊してしまった。だが、イスラム勢力は利益のあがるヨーロッパとの奢侈品貿易を継続していた。ただしヨーロッパ商人の通商活動には課税するようになった。
  ヴェネツィアはアドリア海の諸島や港湾、半島部に支配を伸ばし、クレタ島をはじめとするエーゲ海にも領地を獲得した。しかし、ジェーノヴァ勢力の膨張に手を焼くようになった。
  他方、イベリア半島ではレコンキスタが最終局面にさしかかっていて、イスラム勢力はイベリア半島南端のグラナーダ王国を残すだけとなった。この王国は、カスティーリャ王権に臣従しながら、何とか命脈を保っていた。イベリア東部ではアラゴン連合王国とバルセローナ商人が地中海における勢力圏を拡大していた。アラゴン連合王国は、サルデーニャ島とシチリア島をも支配下に置くようになった。
  フランス王国の南部にもアラゴン王権の強い影響がおよんでいた。また、イングランド王を兼ねるプランタジュネ家門がギュイエンヌ公領に加えて広大な領地をフランス西部に保有することになった。東部ではフランス王族から分離自立したブルゴーニュ公が台頭し支配地を拡張していた。王国域内では、フランス王はもはや弱小君侯でしかなかった。