舞台となるヘイスティングズの町

  『刑事フォイル』の舞台となっているブリテン島南東部海岸のヘイスティングズの場所を、以下のグーグルマップで示す。

  地図が示すように、ヘイスティングズはブリテン島でもヨーロッパ大陸にもっと近い町のひとつだ。その分、ナチス・ドイツが占領し軍事的に支配する地域に近く、ドイツ軍による脅威を最も強く受ける場所でもある。
  カレーやブーローニュは目の前の対岸にあり、そこから南西に向かって少し離れたルアーブルにいたるノルマンディ海岸は、やがて連合軍がヨーロッパへの侵攻するための大規模な上陸作戦の決行地点となる。
  町の住民たちは、まさに指呼の距離で、カレーに進駐したブリテン軍部隊がナチスによって駆逐され、殺戮され、英仏海峡に追い落とされる様を「見た」――新聞やラディオ放送で知った――わけだ。海峡の向こうにはドイツ軍が迫っていると、町の住民たちは感じていたわけだ。

  その意味では、戦時中の、戦時体制のもとでの犯罪捜査の舞台としては、まことに意味深いロケイションだといえる。つまり、絶妙なロケイションを物語の主要舞台として設定したということであって、じつにみごとな手腕だといえる。