用語に関するノート

クリエティスモ/クリエンテリスモ

クリエンティスモないしクリエンテリスモ(clientismo / clientelismo)とは、支配=従属関係をともなう特殊な相互依存関係のネットワークによって維持される権力構造・支配秩序を意味する。
それは、有力者を中心に組織された、庇護と影響力の行使=受容、利権誘導などが絡み合った仕組みであるという。
このような権力関係は、古代ギリシア・ローマ時代から地中海ヨーロッパのあちこち、とりわけイタリアで目につく存在だ。
もともとは、「クリエントゥス:庇護民」という言葉が源泉になっているようだ。有力者が零細民に衣食住を提供して庇護しながら、自己の勢力を拡大したり敵対者を追い落とすための私兵団として利用する関係から始まったとか。
地中海ヨーロッパでは、ギリシアやイタリアなどで今でも執拗に存続している。

ところが、利益の保護や誘導を媒介とする官庁、団体や企業、個人のあいだの相互依存関係とこれにもとづく権力構造(影響力を拡大ないし維持しようとする仕組み)は、日本を含む世界中で見られる。
そこには、「庇護・恩顧関係」とか「指導=被指導」「支配=被支配(従属)」関係があって、自分たちの政治的・経済的優越を保持するためのメカニズムとして利用されている。

政治の世界でも、庇護や利益保護・誘導の見返りに、選挙運動での投票や支持を暗黙のうちに相互了解する関係がはたらいているのだから。つまり、政治とは本来そういうものなのかもしれない。
というのも、政治家(politician)とは、本来、支持母体となる団体や地区、階級などの利害代表なのだから。
そこで、現代政治学では、こういう癒着や結託という相互依存関係にもとづく権力関係や秩序を「クリエンティリズム」というカテゴリーで分析・解明しようという方法が提起されている。

ところで、アメリカをはじめとする先進諸国では今では、弁護士とか広告代理店などの専門職の顧客を「クライアント」と呼ぶ。
クライアントとは、もともとは「庇護を求めてきた(地位の低い)者」という意味である。そこには、時代の変遷を感じるとともに、(自分が守ってやっているという)専門職層の誇りと驕り(他者の見下し)が含まれているような気がする。