用語に関するノート 1

オフショア

オフショア(offshore)とは、もともと「岸から遠く離れた場所」「沖合」を意味する。
金融の世界では、「本土から離れた海洋上」という意味から転じて、「通常の国家の金融上の管理体制」から離脱した経済空間・場所を意味するようになった。
「金融規制の緩和」「自由化」が行き着くところまで行った状態のことだ。
言い換えれば、巨大な金融権力を持つ企業や組織が、好き放題に活動できて、国家などの公的機関が介入できない仕組みの空間を意味する。

その最も極端な例が、「タックスヘイヴン」すなわち「租税回避地」だ。
たとえば、グランドケイマン諸島とか、ルクセンブルク公国、モナコ公国などでは、そこで法人格をとった企業や銀行は、経営や資産状態について税務=課税報告の義務が免れている。
そうなると、課税の根拠となる資料がないので、登録税のほかには、ほとんど課税されず、普通のほかの国の政府のような金融業務への規制を受けない「自由」を得ている。

脱税や金融犯罪、マネーローンダリングなどの調査・捜査のために、ほかの普通の国家がそういう国に拠点を置く企業などの経営に関して知ろうとしても、「国内法」を盾に企業経営や資産の秘密を明かすことはない。 後ろ暗い資金はオフショア市場の入口で、完全に痕跡を絶つのだ。

そうなると、そういう場所には、巨大な資産をもつ企業や金融機関、団体の経営管理事務所や業務管理者 がやってくるので、そこには経営かんりに伴う資金が流れ込み、さらに大金持ちの贅沢やリゾート消費関連の金が落ちることになる。
きわめて小さな国土や人口の国ならば、それで十分に潤うことになる。
もちろん、普通の国ならば、そういう「あぶく銭」だけでは、「国民経済」「国民生活」は成り立ちようがない。

中央政府の規制や統制がないので、脱税をはじめとして租税を逃れようとしたり、犯罪に絡んだりする資金などは野放しで流れ込み、後ろ暗い資金をあつかう企業や銀行、組織の「自由な経済活動」がまかり通ることになる。
「普通の国家」のなかにも、「経済的特別区」を設けて、オフショア市場空間をつくり、そこに世界中から企業や金融機関を呼び込もうとするところがある。