用語に関するノート

コロラトゥーラ

コロラトゥーラ(coloratura)とは、もともとイタリア語で「色彩を豊かに飾ること」を意味する。「コロラ」とは色彩や色合いを意味する語だ。英語のcolourのもとになった語。
俗っぽく言えば、派手な色合いで飾り立てることを意味する。

音楽の用語としては、オペラの歌唱で旋律を色彩豊かに飾り立てる技法を意味し、主要旋律に装飾音符(音階)を加えて、音程を上下に激しく変化させ、振り広げることになる。
音程を幅広く上下に震わせる歌唱法が要求されるので、オペラ歌手の奏法=技法としては、かなり高度なものに属するという。

ヴィヴラートがさざ波だとすると、コロラトゥーラは台風並みの大波(ただし上下動の周期がきわめて短い)になるかもしれない。ごく瞬時に音程が上下に激しく揺れることになる。

バロック期に開発され、やたらに多用されたらしい。華美さや豪華さを誇張する時代にふさわしい表現技法だった。が、多用すると、どこを盛り上げ強調しているかがわかりにくくなり、ゴテゴテの厚化粧のように感じ、あまり快感は感じられないかもしれない。

有名な例は、モーツァルトのオペラ『魔笛』の「夜の女王のアリア」。
ただし、この場合は、美しさを強調するというよりも、夜の女王の執念深さというか、妄執にも近い悪意を誇張する表現となっているようだ。その意味では、このコロラトゥーラはみごとに成功している例だといえる。
音楽とオペラに「革命」をもたらしたモーツァルトの業績によって、オペラの登場人物の心情(性格)を強調・誇張する技法として使われるようになった。

数少ない場面で、抑制を利かせてコロラトゥーラを入れると、本来の美しく装飾する役割が生かさるようになるという。