14世紀半ば頃の西ヨーロッパ

  この絵地図は、14世紀半ば前後の西ヨーロッパの地政学的状況を概略図示したもの。
  この時代で目立つできごとは、何よりも「百年戦争」だ。フランス王国の有力家門ノルマンディ=アンジュ―がブリテン島でイングランド王国を拡大させ、大陸フランスでも――アンジュ―柏領やギュイエンヌ公領・アキテーヌなど――広大な領地・支配地を擁していて、パリとその周域だけを統治するカペー家に対抗して、フランス王位を要求して各地で戦端を開いていた。
  フランス王国の諸侯は、大雑把に言って2つの大きな同盟に結集し、それぞれアンジュー家とカペー家のいずれかを盟主に担いで、フランス王国各地での領地相続争いやらの局地的な勢力争いに参集した。イングランド王国はフランスの有力君侯の属領でしかなかったので、この戦乱をイングランドとフランスとの戦争と見ることはできない。
  実態はフランスの諸侯同盟の勢力争いであって、その片方の君侯がたまたま属領イングランドの王位を保有していたということだ。
  フランス王国の中央部から西部で領地・支配地や王位をめぐる勢力争いが展開する一方で、広大な勢力圏を擁していたのがブルゴーニュ公国だったブルゴーニュ公は、イングランドはいまだ未開地が多かったので、当時のヨーロッパで最大のの版図を支配した君侯だった。
  ところで、イベリア半島では、レオン=カスティーリャ王国とアラゴン=カタルーニャ王国がレコンキスタを進め支配地を拡大し、イスラム勢力のグラナーダ太守国はこれらの王国に臣従してかろうじて存続していた。
  とはいえ、この時代には近代国民国家のような領土支配の仕組みや国境がなかったので、支配地の版図はきわめて不安定な一時的・相対的な平衡状態を意味するすぎない。まだら模様に領地や所領の飛び地が並存していた。