用語に関するノート 2

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フォード主義

本来の意味

1910年代、アメリカの自動車製造会社のフォード社では、T型フォード車のような自動車を大量、安価、迅速に生産するために、

@全体の設計を、単純な部品の組み合わせで構成する
A部品や素材を標準化=規格化する
B製造工程を科学的に分析して、いくつもの単純な作業に分解して科学的に分析し合理的な作業手順を定める
Cこの単純な作業手順を順次・段階的に組み合わせることによって流れ工程化して、全工程を編成する
Cしかし、単純な作業の反復で意欲や注意力の持続が難しくなったために、労働者の休憩や余暇利用を促進し、自発的な目標設定とか作業や工程・品質の改善のための自主的な提案活動を促進することで、自発的な参加意欲や達成感を高める

などいう経営管理・生産管理のシステムをつくり上げた。

要するに、全工程をより単純な作業に分解=分業し、作業者ごとに作業を反復させ専門化させ、熟練度を上げる。そして、今度は、個別の作業の担い手たちの協業=統合を組織化することで効率を高めるという方法論だ。

社会レジームとしてのフォーディズム

この方法論は、その後、現代まで経済活動だけでなく、政治活動や学術・文化活動などのあらゆる分野に採用されてきた。
だが、現在では、細分化や専門化が進みすぎて、全体の仕組み・連関や自分の仕事の意味が見えなくなっていることが指摘されている。機会に合わせて単純化された単調一律のリズムでの作業が、注意力の低下・散漫化や意欲を低下させる弊害も指摘された。
日本では、このような弊害を克服するため、作業員集団が工程や作業、品質の「改善」のための運動を組織化することで、参加意欲や注意力の向上をもたらす方法が開発された。
また、細分化された局部的な合理性・効率を追求するあまり、総体として煩雑さが増大し、歪みや無駄がもたらされることもある。

このように、社会の制度や人びとの行動を、より単純ないくつかの部面に分解して特徴や仕組みを分析して科学的に標準化し、次にふたたび結合して総体としての効率や効果を高めようとする方法論一般を、社会学や歴史学、政治学の理論家たちが「フォード主義(フォーディズム)」と呼ぶことがある。
ブリテンやフランスの理論家たちは、1930年代から1980年頃までの西ヨーロッパやアメリカ、日本などの「先進諸国」の経済成長と政治的安定は、フォード主義の社会全体への適用・導入によって達成され、維持されてきたと指摘している。
だが、現在では、フォード主義の有効性を支えていた前提(社会の構造と状況)は変動し、成長と安定は失われていったという。