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このあと、《神の銀行家》という作品を考察します。
その理由は、この作品自体がきわめて興味深い問題作だということもありますが、《ゴッドファーザー V》をより面白く観るためです。
《ゴッドファーザー V》は全世界で、とりわけヨーロッパで大きな反響を呼びました。
ところが日本では、さしたる反響もなく上映期間が過ぎていってしまいました。
理由は、日本の「映画評論家」「批評家」なる人たちの無知と勉強不足で、映画の面白さや意味を理解できず、マスメディアに情報発信できなかったからでした。
「どうもよくわからない物語だった」という評判で、あまり話題にもなりませんでした。
どれほど胸を張っても、日本は文化的には、ヨーロッパやアメリカと比べると、世界の辺境なのかもしれません。
事件が金融スキャンダルということなので、日本の金融事情や経済に関する事情を見ると、
その頃、日本ではバブルの絶頂期でした。実際には、金融崩壊の序曲が始まっていたのですが、人びとは、経験したことのない「金融資産の空前の膨張」による好景気というものに酔いしれていました。
《ゴッドファーザー V》の物語の背景をもう少し丁寧に掘り下げていれば、あるいはバブルの災厄の規模はいく分なりとも抑えることができたかもしれません。
さて《ゴッドファーザー V》は、コルレオーネ・ファミリーが巻き込まれた世界的規模での金融バブルとこれに絡む政治的謀略、金融犯罪=スキャンダルを描いた作品です。
事件の中心には、いわゆる「ヴァティカン銀行」と教皇庁がいすわっているのですが、真相は闇の奥に隠れたままです。聖なる宗教組織はまぎれもなく独自の権力構造であって、その内部や周囲では醜悪で苛烈な権力闘争が繰り広げられているのです。
そして、事件はマフィア組織やイタリアの政治構造的な腐敗にもつながっています。これも真相は闇の奥に潜んだままです。
背景には不毛な「冷戦構造」があったのです。
それらを理解しないと、ゴッドファーザーVの面白さと意味は理解できません。
コッポラたちは、そういう歴史的・社会的状況を鋭く抉り出して描いたのです。たぶん、映画として第一級の史料を後世に残したはずです。
しかし、作品の素晴らしさを知ってもらうために、少し遠回りをして、イタリア発の世界的な金融スキャンダルを追いかけてみることにします。
《ゴッドファーザーV》のラストシーン近くで、なぜ、どのような経緯で、イタリア人銀行家がロンドンのシティの橋の工事用桁に、レンガをポケットに詰め込まれて縊死に見せかけて殺されなければならなかったのか。「神の銀行家」と呼ばれた面々の1人だった男が無残に吊るされたのは、どのような背景があったのか。
それを知ると、コッポラの作品の秀逸さが鮮やかに理解できるでしょう。