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月光町もまた不可思議な世界にある。
とにかく不思議な論理構造の世界で、私としては、このアニメの物語を見るにつけ、おじゃる丸の世界での登場人物たちの発想や行動スタイル、起きる出来事などから、私自身が生きている現代の人類社会の仕組みや人びとの生きざまについて深刻な批判的省察を迫られることになるのだ。
「これでいいのか、人類よ!」と。もちろん、自分に対しても脚下照顧ということになる。
おじゃる丸の世界の論理構造の不思議さを印象づける、こんな物語がある。
それは、はるばる宇宙の彼方からUFOのような住居に乗って月光町にやって来た星野一家をめぐる「あれこやこれや」だ。
星野家は3人家族。おじゃる丸が「星野」と呼ぶ少年宇宙人とその両親、パパとママだ。
彼らの顔貌はみな一様に、鼻の下にちょび髭を生やし、ヘアスタイルがチョンマゲになっている。つまり、顔つきは男女や長幼の差異がないのだ。
彼らが地球にやって来た目的は、地球征服だ。地球を「わがものとする」ためだ。これまで彼らは、宇宙を航行しながらいくつもの惑星を支配してきた。
とはいえ、彼らは各惑星に戦争や攻撃を仕かけたわけではない。言葉によって惑星で一番偉そうな住人に「この星がほしい」「この星をくれ」と申し込んで、了解を得て惑星を征服してきたのだ。
征服したとはいえ、その惑星世界の秩序やルールを組み換えたわけではなさそうだ。つまりは、その惑星を自分たちの所有物とした宣言する機会を得たということなのだ。
彼らは「この惑星は自分たちのものだ」と宣言した――言説を発した――ということであって、自分たちの意思や命令を強制するような、その征服や支配を実効化する制度や秩序を構築したわけではない。
実に平和的な惑星征服ではないか。
ある惑星では、住民のあらゆる要望を行政官庁に対して書類申請することになっていて、受理手続きはすべてロボットがおこなう仕組みになっていた。星野一家は「この惑星がほしい」という申請を出して、受理認可されたため、その惑星を「わがもの」とした。
そんな彼らが太陽系を通り過ぎたときに、地球という美しい惑星を発見して、いたく気に入った。それで、この惑星の支配者に「この星をくれ」と要求したいと願って地球の月光町に住み着いたのだ。
星野一家は要求を伝えようと地球の支配者を探した。
すると、日ごろの振る舞いやら周囲の日飛び地の接する態度がすこぶる尊大なおじゃる丸がいた。彼らは、小生意気なその子どもこそ「地球の王」に違いないと判断した。おそらく彼らは、これまでに訪れた惑星のなかでは、おじゃる丸ほどに偉そうな振る舞い・態度を示す者に会ったここがないのだろう。
それ以後、彼らは様々な機会をとらえておじゃる丸に「地球がほしい。地球をくれ」と要求しようと試みてきた。だが、彼らは気が弱いせいか、それともおじゃる丸の態度があまりに傲岸なせいか、おじゃる丸の前ではシドロモドロになってまともに声を出せないのだった。
ところがあるとき、自分に合った仕事を探し求めてしょっちゅう仕事を変えている若者ケンに「自分の夢を表現すべきだ」と激励された星野は、顔や手に冷や汗を浮かべながら、おじゃる丸に思い切って「地球をくれ」と伝えた。
「そんなことが星野の夢なのか。地球がほしいとな。
そうか、ではチキュウを好きにしてよい」というのがおじゃる丸の答えだった。
「やった、ついに地球が手に入った」と喜ぶ星野。それを遠隔画像でUFOから見ていた星野パパとママも欣喜雀躍してUFOを浮かび上がらせ、月光町の上を飛翔させた。
ところが、喜びもつかの間。おじゃる丸は星野に尋ねた。
「ところで、チキュウとは何かの?」
愕然とする星野。そして、UFOはガクンと失速して地上に落下した。
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