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原題について:
原題(フランス語)の意味は、「協奏曲/コンサート(演奏会)」という意味です。この作品の中心は、コンサートでのチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」の演奏です。
邦題が「オーケストラ」となっているけれども、フランス語の題名は「ル・コンセール」(協奏曲またはコンサート)なのだから、主題は協奏曲の演奏会です。ところが、フランス映画といえば「強烈な個性どうしのぶつかり合い」が見ものということで、楽団と団員たちを題名にもっていたのかもしれません。もちろん主人公たちは、オーケストラ(指揮者と団員たち)なのですが。
物語としては、ありそうもないファンタジー。笑えます。しかしそれよりも、泣けます!。
理不尽な政治的・社会的環境のもとで打ちひしがれた人びとが尊厳を回復しようと奮闘し、成功する物語でもあります。
見どころ & あらすじ:
クラシック音楽ファンには、ぜひ観てほしい作品。
物語の筋はファンタジーなので、「そんな荒唐無稽な話はおかしい」と言わずに観てほしい。
あの古い名作『オーケストラの少女』が好きだという人たちにとっては、これほど盛り上がるファンタジーはないだろう。
ヨーロッパにもあるんだな、「お涙ちょうだいの講談・浪花節」って。とくにフランス人には。
しかも、泣ける話の背景にはいつもチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、あの美しくも哀切な旋律が流れている。泣けとばかりに。
旧ソ連の政治的迫害で一流管弦楽団の指揮者の地位を奪われた男が、パリの有名劇場からの依頼に応じて、偽物の楽団を仕立て上げて、見果てぬ夢を実現しようともくろむ。
だが、昔の楽団員仲間も当局による迫害の結果、今はその日の暮らしに追われている。
みんな、リハーサルや演奏から30年も遠ざかっている。楽器を手放した者もいるというありさま。それでも、みんな集まってくる。
元指揮者は画策をめぐらして、パリの劇場と公演契約を取り交わし、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」を演奏しようと企図する。
共演のソリストに指名したのは、フランスの最有力の若手女性ヴァイオリニスト。
この企図には、政治的迫害によって音楽家生命(そして生存さえ)を絶たれたヴァイオリニストへの心底からのレクイエムが込められていた。
映画の始まりでは、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番」が流れる。美しく、ロマンティックな曲。
さすがフランス映画、出だしは華麗なピアノ協奏曲か…なんて思っていると、物語はとんでもない筋立てになる。
ときどき背景に流れるチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」がライトモティーフとなって、この波乱に富んだ物語を盛り上げる。
うらぶれた生活のすぐ傍らに、美しく華麗な音楽芸術の世界があるのだ。
ロシア人、これにはユダヤ人やロマ=ジプシーも含まれる。含まれるからこそ、絶望の淵にあっても芸術を失わない、音楽の底力を見せつけるような「したたかな生きざま」が見えてくる。
ロシア人とは、まさにそういうものだと言われている。追い込まれ迫害されても、最後の一瞬間で美や芸術への憧憬を捨てることがないという。
そういうロシア的・スラヴ的特質をよく知る監督であればこそ、破天荒かつ美しく仕立て上げた物語だ。
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