人間は経験から学びます。そして、失敗から学ぶことの方が多いのです。
キキはまだ13歳の少女です。なのに、いや、だからこそ、故郷のみんなから祝福されて、魔女修業の旅に出ます。独り立ちに向かって飛び立っていきます。
冒険から学ぶために。
若さの特権は「失敗する自由」「壁にぶつかって悩む機会」がたくさんあること。
もちろん楽しいことにもたくさん出会えます。苦しいことにも、悲しいことにも出あうでしょう。
そうです、冒険の旅ばんざい!
アニメだから、と言ってしまえばそれまでですが、「魔女の宅急便」に描かれている「人びと」と「場」を真剣にかつ遊び心いっぱいに考えてみます。
というのは、いま私たちが生きる世界があまりに殺伐としているから。若者たちに失敗する自由を与えていないように見えるから。
なかなか難しいけれど、周りの人がどうでも、私自身は、この物語のように大らかでありたいと願うばかりです。
原作: 角野栄子[『魔女の宅急便』1985年、徳間書店
見どころ:
主人公キキとその周囲の人びとの心性や行動スタイルに学びましょう。
「魔女の宅急便」から学ぶこと。それは、何かに夢中になること、失敗を恐れずまずは挑戦することのすばらしさです。
魔女の血を引く少女キキは13歳。思いついたら走り出すタイプです。
あるとき急に思い立って、黒猫のジジを連れて空飛ぶ箒に乗り、修業の旅に出ます。
13歳になった魔女が独り立ちをめざして修業の旅に出るのは、女系の魔女の世界の古くからの慣例というか掟なのです。
真夜中に夜空に飛び立ちますが、突然の雷雨に会って、貨物車で雨宿り。
翌朝、美しく晴れた田園風景を見ながら、海に向かって飛び立ち、海辺の大きな町=都市に降り立ちます。
海に向かって突き出た岬、漁師や沖仲士たちが元気に働く活気のある港湾、深い森と草原に覆われた山。
それらに取り巻かれたこの町の中心には、高い時計台がそびえています。
しかし、大きな都市にたった一人(と一匹)でやってきたキキには、その日泊まる場所さえ当てがありません。
ところが、とある高台のパン屋の奥さんを手助けすることになります。
店に買い物に来たある若奥様が置き忘れた赤ちゃんの「おしゃぶり」を、キキは箒にまたがり空を飛んで届けました。それがきっかけになって、この店に寄宿することになりました。
空を飛ぶことしかできない、けれどもそれが特技。
というキキは、配達業=「宅急便」で生計を立てようと挑戦します。
お客様の大切な荷物を配達して届ける仕事です。
キキはチャレンジ精神と責任感、そして空飛ぶ能力だけを元手に、仕事を始めました。
小さなキャリアウーマンの誕生です。 最初のお客様は、近所に住む美人のデザイナー。お届け物です。
ところが、最初の仕事から壁にぶつかってしまいます。
小さな坊やに誕生祝いの鳥かごと黒猫のぬいぐるみを届ける仕事でした。キキはジジを連れて飛び立ちます。
ところが、突風にあおられた拍子に森の上空で落としてしまいました。
鳥かごはなんとか受け止めましたが、黒猫のぬいぐるみは森のなかに落下してしまいました。
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