けれども、裕福そうな家庭に暮らす孫娘は、お礼を言うどころか、「このパイは好きじゃないのよね」とつぶやく始末。キキは落ち込みます。
そして、トンボたちのパーティが始まる時間はとうに過ぎてしまい、しかも、キキの一帳羅の服はずぶ濡れ。もうパーティには行けない……。
キキはすっかり落胆してしまいます。
ずぶ濡れで下宿に帰ったキキは、疲れや落胆もあってか、風邪をひいて寝込むことになりました。
やがて、キキは回復しますが、魔法の方はどん底のスランプに陥ってしまいます。
猫のジジのことば(鳴き声)を理解できなくなり、箒で空を飛ぶ力もすっかり弱ってしまいました。
必死で空飛ぶ練習をしますが、うまくいきません。もがいて悩むキキ。
すっかり落ち込んでいるキキにパン屋のおかみさん、オソノは歩いて届けられる荷物の配達を頼みます。
道順を教えてもらって行ってみると、なんとトンボの家でした。
トンボはキキに、現在開発に取りかかっている人力飛行機の動力部を見せます。それは、自転車を改造して、ペダルの動きを伝動してプロペラの回転にするフォーミュラです。
トンボはキキを後ろの荷台に乗せて、海岸まで、このプロペラ自転車の試験運転と練習に出かけます。
海辺までの坂道をプロペラ自転車は一気に駆け下ります。そのとき、キキは無意識のうちに飛ぶ力を使いました。
ところが、海岸段丘の縁を回る急カーブでは、道路を飛び出して海岸の草原に転落してしまいました。が、2人とも怪我もなく、無事「着地」しました。
浜辺には、いま町で評判の大型飛行船が係留されていました。
トンボは、仲間といっしょに飛行船見学に行こうと誘いますが、キキは急に気分を変えて、帰宅してしまいます。
どうやらキキは、自分とほかの少年少女たちのと違いというか、距離を感じたようなのです。
しばらくしてから、あの山の手の邸宅の老婦人からまた仕事の依頼があって、キキは屋敷を訪ねます。
実は老婦人は、このあいだのお礼をするためにキキを「お茶」に呼んだのです。
老婦人と家政婦とキキが「お茶」をしていると、外を一陣の突風が吹き抜けました。
ところがテレヴィのニュースは、係留されていた飛行船が突風で飛ばされてしまったと伝えます。トンボは係留索につかまったまま、吊り上げられてしまいました。
舵を失った飛行船は風に流されて時計台横の建物に倒れ込み、トンボに危険が迫ります。
キキはトンボを助けようと邸宅を飛び出して、街に走り出します。
途中で、掃除作業のおじいさんからデッキブラシを借り、箒の代わりにして飛ぼうとします。
このときキキは、スランプに陥ったことなどすっかり忘れ、ただトンボを助けなきゃと必死に飛び上がろうとします。が、デッキブラシはなかなか言うことをききません。
それでもなんとか、時計台の近くまで飛び、トンボを助けようとしますが、うまくいきません。
必死の苦闘の結果、力尽きたトンボが綱を手放し地面に落ちる寸前に、なんとか助けることができました。
近くの住人や現場に駆けつけた大勢の人たちが、みんなキキとトンボに声援を送って励ましてくれました。
この活躍で、デッキブラシにまたがる魔女キキは、街の住民の多くに知ってもらえるようになりました。