世界経済における資本と国家、そして都市   章と節の目次

章または節 章または節の概要
序章 世界経済のなかの資本と国家という視点   近代国民国家は、資本主義的世界経済のなかに位置づけてはじめて認識できる。つまり、世界経済が多数の国民国家へと政治的・軍事的に分割されている状態を理解するということだ。この視点に立つと、資本主義についてのイメイジは大きく転換する。⇒章の目次
第1章 ヨーロッパ世界経済と諸国家体系の出現   国民国家の生成はヨーロッパ中世の秩序の解体過程のなかで生じた。その歴史を理論的に総括するための方法論的検討をおこなう。中世晩期の歴史は、多数の国家が並存するという特殊な政治的・軍事的編成をともなう世界市場を生み出した。
  そして、世界システム論の視座から、従来の資本主義観を問い直す。⇒章の目次
補章−1 ヨーロッパの農村、都市と生態系
     ――中世から近代
  中世ヨーロッパの社会と秩序の構造がどのようなものであったのかを、都市と農村、農業と商業との対比と連関において概説しながら、従来の中世史観パラダイムを組み換える。⇒章の目次
補章−2 ヨーロッパ史における戦争と軍事組織
     ――中世から近代
  国家は世界経済のなかで独自の利害に沿って動く軍事的単位であるがゆえに、それが生い立ち成長してきたヨーロッパの地政学的=軍事的環境によって存在構造を制約されている。そこで、ヨーロッパ中世秩序の解体過程のなかで戦争と軍事組織がどのように変化したかを追跡する。
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第2章 商業資本=都市の成長と支配秩序   11世紀から16世紀、最初に地中海方面で世界貿易圏が形成され、遅れて北海=バルト海沿岸の北西ヨーロッパの遠距離貿易圏が成長する。この2つは周囲の諸地域を巻き込みながら融合して世界市場=世界経済を生み出した。
  その文脈を背景に中世秩序は変容転換して諸国家体系が形成される。この過程で決定的な役割を演じた商業資本と都市の権力のヨーロッパ各地での成長の様子を分析する。
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第1節 地中海貿易圏でのヴェネツィアの興隆   11世紀から地中海では世界貿易圏が形成され始め、そこでは北イタリア諸都市が領域国家へと変貌しながら、貿易や軍事での覇権を競い合っていた。ヴェネツィアがいち早く覇権を掌握した。地中海の地政学的環境のなかに位置づけて都市ヴェネツィアと商業資本の権力の隆盛を眺める。⇒節の目次
第2節 地中海世界貿易とイタリア都市国家群   地中海世界貿易の構造とその地政学的状況を背景として、イタリア都市国家群の出現と成長過程を分析しながら、それらの対抗や覇権争いを描き出す。
  地中海貿易とイタリアの政治的・軍事的状況は、14世紀の危機を転機として構造転換していく。節の目次
第3節 西ヨーロッパの都市形成と領主制   ゲルマニアを主な対象として中世における都市の形成過程を概観する。都市は多様な来歴を持つが、商人貴族による寡頭支配が成立した諸都市は周囲の君侯領主に対抗して自立的な政治体となっていく。⇒節の目次
第4節 バルト海貿易とハンザ都市同盟   北ドイツからバルト海沿岸一帯では、植民や都市集落建設が繰り広げられ、やがてフランデルンからバルト海方面で遍歴商人によって遠距離貿易が組織された。彼らは仲間団体としてのハンザを結成した。やがてハンザは都市同盟に発展する。そのさい商業資本の支配権力や都市の統治構造はどのように形成されたのか。また、都市は領主たちとどのような関係を結んだのか。⇒節の目次
第5節 商業経営の洗練と商人の都市支配   ヨーロッパ各地の諸都市と商人の権力の成長過程のなかに位置づけながら、資本としての商人経営の管理・組織形態が商業会計システムの発達とともに変革される過程を考察する。経営管理の手法は都市統治にも発揮された。また商人が支配する都市の生活環境を垣間見る。⇒節の目次
第6節 ドイツの政治的分裂と諸都市   ゲルマニアではドイツ王国=ローマ帝国という奇妙な法観念をまとう政治的=軍事的環境が形成され、19世紀まで多数の領邦国家が分立割拠する状況が持続した。ここでは、13〜16世紀のドイツの政治状況のなかで諸都市がどのように振る舞ったのかを跡づける。⇒節の目次
第7節 世界貿易、世界都市と政治秩序の変動   第2章のしめくくりとして、ヨーロッパ世界市場の形成にともなう地政学的環境の変動過程を総括し、なかでも商業資本の権力中心としての都市の機能について省察する。
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補章−3 ヨーロッパの地政学的構造
     ――中世から近代初頭
  中世から近代初期まで、諸国家体系を生み出すヨーロッパの地政学的構造を省察する。ヒスパニア、ガリア、ゲルマニア、アングリアなどの地域ごとの社会的・経済的・政治的・軍事的状況の特徴をつかむ。⇒章の目次
補章−4 ヨーロッパ諸国民国家の形成史への視座   近代国家で生き延びたのは国民国家に成長したものだけだ。その誕生・形成の歴史を分析する場合、国家をどのような存在として見るかがまず問題となる。ここでは、国家とは近代だけに特有の政治体と見なして、その固有の属性 Staatlichkeit を検討する。⇒章の目次
第3章 都市と国家のはざまで
     ――ネーデルラント諸都市と国家形成
  ヨーロッパ世界経済の形成とともに商工業の中心はネーデルラントに移動した。豊かなネーデルラントは有力諸王権の勢力争いの舞台となる。そして、ハプスブルク王朝の支配から離脱するため、諸都市は同盟して最初の近代国家を創出することになった。⇒章の目次
第1節 ブルッヘ(ブリュージュ)の勃興と戦乱   フランデルン伯領では伯の保護下でブルッヘやヘント、イーペルなどの商業都市が建設され、いち早く毛織物産業が育成された。なかでも、ブルッヘはハンザの影響を受けながら世界貿易の軸心へと成長する。やがて、都市内の階級闘争から、近隣の王権や君侯を巻き込んだ紛争や争乱が繰り広げられる。⇒節の目次
第2節 アントウェルペンの繁栄と諸王権の対抗   ヨーロッパ貿易の構造転換とともにアントウェルペンが毛織物と香辛料の取引中心地として急速に成長した。そして、ポルトゥガルやエスパーニャの隆盛とともに世界貿易と金融の中心地となった。だが、ネーデルラント全域でのエスパーニャ王権による集権化は反乱や宗教紛争を引き起こし、戦乱のなかでアントウェルペンは頂点から滑り落ちることになった。⇒節の目次
第3節 ネーデルラントの商業資本と国家
     ――経済的・政治的凝集とヘゲモニー
  エスパーニャ王権に対して反乱を起こしたネーデルラント北部諸州は、ヨーロッパ世界経済で最優位を獲得する。その優越を裏打ちする経済構造を探り、独立闘争の経緯を追いかけ、北部諸州の政治的・軍事的同盟の構造を分析する。⇒節の目次
第4章 イベリアの諸王朝と国家形成の挫折   レコンキスタをつうじて形成されたイベリアの諸王朝は強大な軍事力を保有していた。15世紀後半、カスティーリャとアラゴンが連合してエスパーニャ連合王国が生まれた。やがてエスパーニャ王家はハプスブルク家門と合同して、ヨーロッパ各地に多くの支配地を持ち、広大な海外植民地を獲得した。だが、その帝国レジームは幾多の分裂要因を抱え、17世紀末までに没落した。⇒章の目次
第5章 イングランド国民国家の形成   西フランクの有力君侯の属領となったイングランドは百年戦争後、域内独自の王権レジームが形成された。やがて域内有力商人層との同盟を土台にイングランド王権は、大陸への経済的従属構造から自立して国民国家形成への道を歩み始めた。⇒章の目次
第6章 フランスの王権と国家形成   フランス王国では、有力君侯が王政を樹立して域内諸地方の統合を試みては挫折するという経験が繰り返された。なぜ、いかにしてフランスでは王権国家の形成が失敗したのか、そして絶対王政の確立はどのような条件下で進められたのかを分析する。⇒章の目次
第7章 スウェーデンの奇妙な王権国家の形成   17世紀、スカンディナヴィアに最新鋭の装備と組織を備えた軍をもつ王権国家が現れ、バルト海とヨーロッパ大陸での戦線を席巻した。気候が寒冷で湿地と森林におおわれた僻遠の北欧で、なぜ、いかにしてそんな政治的・軍事的凝集性を備えた強国が形成されたのかを考察する。⇒章の目次
第8章 中間総括と展望   これまでの研究を振り返り、国家論の新たな方法を探るために、資本の世界市場運動の形態と世界市場的文脈における国民国家の形成過程を総括する。⇒章の目次