シェーン 目次
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大農場主vs小農民
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大農場主vs小農民

  さて、映画の舞台となった地方でもやはり、ホームステッド法によって後発的に入植開拓に参入した小農民たちと、都市集落のボスとして振る舞いながら牧場・牧草地を拡大しようとする大牧場主との対立が、物語の背景となっている。
  19世紀後半になると北アメリカでも資本主義的経済循環のメカニズムが明白にはたらき始めた。景気の上昇と下降が周期的に繰り返し、1850年代の大不況の荒波に押し流されて東部や中西部で生計の道を閉ざされた人びと、あるいは遅れてヨーロッパからやって来た移民たちが、生き延びる可能性を求めて西部辺境での開拓に挑戦していた。
  しかし、後発の開拓小農民にとっては、厳しい生存環境だった。残されていたのは、先発の開拓者たちが手をつけることができなかったような荒地や肥沃度の低い土地だった。

  そういう辺境の開拓に携わった小農民層は、まもなく、大農場主や大牧場主によって圧迫・迫害されてるようになった。あるいは鉄道建設用地として利用しようとして、あるいは土地支配・経営規模を拡大しようとしていた大地主たちは、土地を安く買いたたくために中小農民たちを追い立てようとしていたのだ。大地主たちは、荒くれガンマンを私兵・傭兵として雇いながら、機会を見つけては開拓農民たちを威嚇・威圧する。

  ここでは、ガンマンたちは西部辺境の農業大資本家たちに雇われた私兵団、傭兵団だったのだ。彼らの行動スタイルは、シチリアのマフィアの行動スタイルとも似ているようにも見える。後の時代に、なぜとりわけ合衆国の都市部でイタリア移民系マフィアが跳梁跋扈するようになったのか、その背景は西部開拓時代にも探し出せるともいえる。

  そんな歴史的な状況を背景に、物語は始まる。
  さてある日、ジョウ・スターレットの小さな農場に馬に乗った男が通りかかった。その男は「シェインと呼んでくれ」と言った。俊敏そうだが小柄な男だった。
  ジョウは、「ここに定着していっしょに農場の開拓をしないか」と男を説得して、雇うことになった。シェインは、漂泊の日々に見切りをつけようと思ったのか、ジョウの申入れを受け入れて、農場で働くことになった。
  ジョウには、美しい妻、マリアンと利発そうな男の子、ジョウイという家族がいた。シェインは、ジョウの家族がかもす家庭的な温かさに惹かれたのかもしれない。
  シェインの振る舞いは紳士的で穏やかだが、孤独の影とともに、銃に物を言わせる殺伐な世界を生き抜いてきたと思わせる――穏やかだが他人を容易に寄せ付けない――雰囲気がともなっていた。だが、農場で働く決意をしてからは、愛用の銃を封印してしまったようだ。

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