奇跡のシンフォニー 目次
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音響・音楽の魅惑

  エヴァンは、ギターという楽器をはじめて見た。
  けれども、指ではじいて遊んでいるうちに、6本の弦が音程の高低の違う音を出し、フレットを指で押さえると場所によって音程が変化するという規則をまたたくまに読みとった。そして、フレットを何本かの指を使って抑え、弦を弾く方法で和音や旋律を生み出すことができることを学んだ。和音でも、同時に何本かの弦が音を発する方法と時間差をつけて順番に爪弾く方法があることも。
  いつしか、エヴァンはそういう方法でリズムとメロディをつくって楽しんでいた。

  それを見たウィザードは、エヴァンの音楽的天才を発見した。
  この子を音楽業界に売り込むことができれば、大金が得られると算盤をはじいた。孤児のエヴァンが生きていくうえでも、音楽ショウビズネスの世界にデビュウさせることが幸福のはずだと、自分勝手な理屈をつけた。

  ところがある日、孤児保護官のジェフリーはニュウヨークのストリートミュージシャン――ストリート・チルドレン――のなかにエヴァンがいるのを見つけた。エヴァンはウィザードから、「オーガスト・ラッシュ」という芸名を付けられていた。
  ウィザードとしてはその場しのぎに、傍らを走り去る広告車の表記を見て名づけただけなのだが。


  ジェフリーはさらに、ウィザードが仕切っているストリート・チルドレンが集住している廃屋も探し出した。そして、ジェフリーは子どもたちを保護するために、警察に協力を要請した。
  だが、警官隊とジェフリーが廃屋に踏み込むと、大半の子どもたちは散り散りに逃げ去ってしまった。
  エヴァンも逃げ出して、街をさまよった。日が暮れた。
  その夜、エヴァンはダウンタウンの教会から響いてくるゴスペルの合唱に誘われて、教会に入り込んだ。黒人の聖歌隊が美しく躍動的なハーモニーを生み出していた。
  ゴスペルという名の通り、合唱は「神の福音」を呼び起こすような美しさと快さ、そして整然とした秩序を備えていた。音楽の理屈はまったくわからないが、抜群の耳と音感を備えたエヴァンは深く感動した。

  行くあてのないエヴァンは、聖歌隊でひときわ生彩を放っていた少女の部屋に入り込み、ベッドの下で眠った。その少女は、家庭の事情で教会で寄宿生活していたのだ。
  翌朝、少女がピアノを練習していると、これまた音楽の響きに惹かれてエヴァンがやって来た。ピアノの音に魅了されいるエヴァンを見て、少女は鍵盤や音階の意味を手ほどきし、さらに楽譜の基礎を教えた。
  まもなく少女は学校に向かった。

  ひとり部屋に残されたエヴァンは、ギターの音響の経験もあって、たちどころにピアノの鍵盤と音階との関係を理解し、楽譜(音譜)の規則をマスターしてしまった。音階は、全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音の7音のサイクルをなしていて、全音差の音は白鍵盤で、半音差の音は黒鍵盤であること。一巡すると、また同じ規則で音階のサイクルが始まること。3つくらいの音の組合せのなかには、とても快い響きを合成すること……などを。
  さらに部屋にあったいくつかの楽譜の意味することも、ピアノの鍵盤の配置からたちまち理解してしまった。♯や♭の意味も。
  つまり、音階や和音の規則、さらには調性まで、直観的に把握してしまった。

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