奇跡のシンフォニー 目次
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世界は音楽に満ちている

  アメリカ映画『奇跡のシンフォニー( 2007 年)』は、原題が August Rush 。「オーガスト・ラッシュ」とは、孤児となりストリート・チルドレンとなった主人公につけられた芸名だ。この芸名の意味を考えてみると、素直にオーガストを「8月」、ラッシュを「殺到」とか「多忙」という意味にとると、何やら興行や行事の名称のようだ。
  しかし少し穿ってオーガストを本来の意味「厳粛な」と、ラッシュを「仄めく光」と取ると、「かすかに仄めく厳かな光明」というような意味合いになる。これが真の意味合いではなかろうか。
  とはいえ、たぶん制作陣は、観客に、この両方の意味合い・文脈に理解してもらおうと考えたような気がする。それはストーリーの筋立てから推理したのだが。
  この――後の方の意味合いでの――芸名は、ストリートチルドレンを搾取して――大道芸をやらせて稼ぎのほとんどを収奪する――悪辣な人物によって「その場しのぎ」に名づけられたものだが、そんな人物がつけたとは思えないほど深い意味合い・味わいがある言葉だ。

  さて、その物語は、現代アメリカ社会にアマデウス・モーツァルトのような天才児が生まれて、なおかつ『オリヴァー・トゥイスト』(チャールズ・ディケンズの小説)のような境遇に置かれたら……というような状況設定プロッティングで描かれるファンタジーだ。

  今回は、この映像物語をさらっと駆け足で眺めることにする。

電撃的な恋と別れ

  1995年のニュウヨーク、ワシントン門の近くで若い男女の音楽家が出会い、一夜の恋に落ちた。
  女性は、東欧出身の若いチェリスト、ライラ・ノーヴァチェク。ジュリアード音楽院で学んでいる。男性は、美しい詩とメロディで躍り出たアイリッシュ系のロックグループ「コネリー・ブラザーズ」のギタリスト兼ヴォーカル、ルイス・コネリ―。
  ライラは妊娠するが、クラシック音楽の世界でのライラの成功を追求する父親は、強引にライラをルイスから引き離し、ルイスと連絡が取れないようにシカゴに移住させてしまった。
  それからおよそ8か月後、ライラは娘の言い分を一切聞こうとしない頑固で厳格な父親と激しく口論した直後に交通事故に遭った。そのショックでライラは早産で男の子を産んだ。
  ところが父親は娘には死産と告げ、実際には赤ん坊を孤児院に預けてしまった。乳児にはエヴァン・テイラーという名前が付けられた。

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