刑事フランク・リーヴァ 目次
フランス風「マフィア対警察」の物語
あらすじ
栄光と苦痛の過去
パリとシチリア
地中海の軛
マフィアの内部抗争の展開
よみがえる過去の疼き
終わらない殺戮戦
権力者の屈折した想い
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栄光と苦痛の過去

  パリ警視庁の刑事たちのあいだでは、過去のマフィアとの闘いをめぐって伝説があった。
  26年前、マフィア組織を壊滅寸前にまで追い詰め、その後、行方を絶った優秀な刑事がいた。その名は、フランソワ・レゾーニ。果断さと冷静な判断力、飛び抜けた洞察力を備えていた。
  だが、マフィア組織の幹部たちの逮捕や死去ののち、残った組織からの報復を逃れるために彼は海外に移住したのだという。
  若い捜査官たちは、フランソワ・レゾーニの栄光の伝説を目標にしていた。

  ところで、今ではフランク・リーヴァと改名していたフランソワは、フランス領ポリネシアの孤島でのどかに暮らしていた。毎日、海を相手に格闘していた。リーヴァ――イタリア語で畔とか岸という意味――という名前がふさわしい生活だった。
  ところが、ある深夜、フランクにパリから電話が入った。
  「ルネ・レゾーニが殺された。マフィア組織が復活しつつある。
  すぐにパリ警視庁に戻って、殺人事件を捜査し、ふたたびマフィア組織を追及してほしい・・・」
  今では警視総監にまで登りつめた、かつての同僚、グザビエー・アンジェからの依頼だった。
  「あの頃と同じ職位(上級警部)を用意しておくよ」ということだった。


  フランクは空路で帰国の旅を急ぎ、翌日からパリ警視庁の組織犯罪捜査ティームの指揮官として復帰・着任した。
  警視総監アンジェの説明によれば、ルネを殺害したのは、パリのマフィア組織ロッジャ・ファミリーが差し向けた殺し屋だという。
  このファミリーは26年前に犯罪シンディケイトとしては壊滅したが、そのときまでに売春や麻薬密売などで蓄えた富を土台に金融コンツェルンとして再編されてきたという。そして、今や金融力と金融ネットワークを背景に国際的に犯罪組織を操り、支配しようと動き始めているという。

  ルネは総監の指示でロッジャ・コンツェルンの捜査を開始した途端に暗殺されてしまった。ルネはフランクの弟だ。なぜ殺されたのか、そしてマフィア組織に久しく途絶えていた暴力が禍々しく再発した背景には何があるのか。
  フランクはロッジャ・ファミリーを探ることにした。

  ところで、かつてフランク――当時はフランソワ・レゾーニという本名を名乗っていた――はファミリーに潜入捜査員アンダーカヴァーとして潜入したことがある。26年前のことだ。
  フランクはファミリーの構成員となって組織の麻薬犯罪組織のメンバーや動きを探り、幹部に接近し、資金ルートを暴き、警察による攻撃目標と打撃の対象を特定した。こうして、ロッジャのシンディケイトは中枢組織を破壊され、ファミリーは解体寸前まで追い詰められた。
  警察による攻撃=抑圧の直前までは、フランクはロッジャ・ファミリーの首領たちから厚い信頼を受けていた。彼らとフランクはかつては親密な間柄にあったわけで、そのときからいわば深い因縁があるわけだ。

  そのさい、組織に潜入したフランクは、シンディケイトのなかで麻薬販売資金の管理、国際送金ルートの手配を任されていた美貌の女性スタッフと親しくなった。その女性はフランクの恋人になった。麻薬組織の資金源を探るのだから、いわば当然の経過だった。
  ところが、ファミリーへの警視庁の攻撃が本格化すると、フランクが警察のアンダーカヴァーではないかという疑念が抱かれるようになったために、フランクは国外に脱出せざるをえなくなった。フランクはフランス領南太平洋の島に移住した。
  それからしばらくして、フランクの恋人が――おそらくはファミリーに手によって――虐殺されてしまった。マフィアの報復だろう
  こうして、フランクの潜入捜査の成功は、彼自身をパリと警視庁から追い立て、しかもカトリーヌを死に追いやるという苦い帰結をもたらした。

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