刑事フランク・リーヴァ 目次
フランス風「マフィア対警察」の物語
あらすじ
栄光と苦痛の過去
パリとシチリア
地中海の軛
マフィアの内部抗争の展開
よみがえる過去の疼き
終わらない殺戮戦
権力者の屈折した想い
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権力者の屈折した想い

  フランクは親密になったエルゾーグとともに、錯綜してきた多くの事件を整理し関連づけるながら、一連の事件の背後に潜む陰謀を分析した。
  その結果として得た結論は、こうだった。
  ロッジャ・ファミリーには、かつてのフランク以外にもう1人、アンダーカヴァーとして潜入した警察のスパイがいる。それは、ルノー・ベルソンに違いない。ベルソンは警察内の誰と結びついて指示や命令を受けておるのか、それが問題の核心だ。

  フランクは、ルノーを追及することにした。だが、パリ郊外の別荘にベルソンを訪ねると、逃亡しようとしたルノーが何者かに狙撃されて殺されてしまった。
  その結果、フランクは謀略の全体の構図を理解した。
  これだけの策謀を企て動かすことができる人間は、パリ警視庁のトップにいる者だと。
  そこで、フランクはエルゾーグとともにグザビエー・アンジュを訪ね問い詰めた。
  グザビエーは答えた。
  発端は、フランクへの嫉妬にあった、と。


  26年前、ロッジャ・ファミリーへの潜入捜査を計画し作戦を練り上げたのは、グザビエーだった。フランクとルネも作戦立案に参加していたが、基本構想と緻密な作戦計画を立てたのはグザビエーだった。そして、潜入という危険な任務を自ら志願した。
  ところが、理詰めの理論家グザビエーはマフィア社会に溶け込んで生活するためには精神的な脆さがあった。それを見抜いてグザビエを引き止め代わりにアンダーカヴァーになったのは、フランクだった。
  グザビエーは、自分の弱点を鋭く見抜いたフランクを疎ましく思い嫉妬した。
  だが、作戦は成功し、ファミリーを壊滅状態に追い込むことができた。しかし、他方で、フランクは海外に逃亡生活を余儀なくされた。

  その結果、パリのマフィアの鎮圧という功績は、第一にグザビエ、次いでルネに恩恵をもたらし、やがてグザビエーは警視総監になり、ルネは刑事部長にまで上りつめた。
  だが、それ以降、グザビエーは警察組織のなかで強大な権限を手に入れたうえに、マフィア組織と深いコネクションを持ち続けることになった。そのための長期潜入者(スリーパー)がルノー・ベルソンだった。それというのも、将来、マフィア組織は復活しそうになるたびに、内情を察知して幹部を闇に葬るための情報を得るためだった。
  そして、フランクの弟ルネを、警察側の暗殺者として育て上げることにした。
  その戦略もグザビエーが組み立てた。

  とにかく、永続的にパリからマフィアの権力を葬り去ろう――マフィアの権力が台頭するたびに叩こう――と執拗な壊滅作戦を考案したのだ。そのために、ルノーを使って、マフィア内部の抗争に火をつけ増幅し、ルネに暗殺の実行を委ねたのだ。
  だが、ルネは殺戮に喜びを感じるようになり、警察幹部としての地位を利用した暗殺者になってしまった。グザビエーの指示がなくても殺し手を染めるようになった。裏で糸を引いていたのはグザビエだったが、ルネの暴走を止めるために、ルノー・ベルソンを使ってルネを暗殺した。

  そして、フランクまで罠に陥れて殺そうとしたのは、妻、マドレーヌがフランクを愛していたのではないかと嫉妬したからだ。マドレーヌが息を引き取るとき、「フランソワ」というフランクの以前の名前を呼んだからだ。嫉妬は一挙に憎悪にまで膨らんだのだ。あるいはさらに、この謀略の構図をいずれフランクが嗅ぎつけた暴くのではないかという脅威もあったのかもしれない。
  恐ろしいまでの権力志向と殺戮戦への渇望に、グザビエもまた、囚われていた。

  ところで、事件解決後、エルゾーグは、フランクとともに熱帯の孤島に移住することになった。警察でのキャリアを棒に振って。

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