この闘争のなかで有力な東部13州は、政治的・軍事的に同盟して戦った方が有利だということで、連合=同盟協約を結ぶようになりました。
身分格差を持ち込んだ議会制度やがて、これらの州のあいだの国際条約(州際協定)として「合州国憲法」が起草され、各州はそれぞれ別個独自に合州国憲法の個別条項を批准して、中央政府との軍事的・政治的・行政的な同盟を取り結ぶことで、USAという1つの連邦国家を形成しました。
ただし、憲法の条項の意味の解釈については、各州の独自性に任せました。それぞれの州が、都合のよいように好き勝手に解釈したといってもいいでしょう。であるがゆえに、国家のあり方をめぐって深刻な敵対が生じて「南北戦争」が発生することにもなったわけです。
このゆるやかな連邦=同盟が、1つのまとままった「国民国家」に統合されていくのは、独立革命のおよそ1世紀後、南北戦争が決着を見る19世紀の後半から20世紀にかけての時期です。
強い独立性をもつ各州(の支配層)は、合衆国憲法のうち、連邦加盟に必要な条項以外については、気に入らないもの(たとえば男女平等や一夫一婦制、有色人種への市民権の付与など)については批准する必要はなかったのです。
そこで、つい先ごろまで、男女平等の条項を認めない州さえありました。
1970年代まで、南部のある州では当局が加担して、黒人や有色人種の自由や活動の権利を暴力によって威嚇していたところもありました。
連邦議会の仕組みも、本来は州の自立性の承認と連邦国家としての統一性をなんとかバランスさせる役割を演じていました。
議会の下院は、正式には「代表院(Representative, congress)」といって、州や地方社会の代表の集合体で、であるがゆえに、立法と財政に関して優越する権力を与えられました。
一方、上院すなわち「元老院(Senate)」は個別州の利害を超えた連邦の諮問機関として、代表院の立法と財政運営を抑制、監視し、軍事、外交政策や連邦全体の司法などを扱っていました。ゆえに、元老院議員は、広い視野をもつ飛び抜けて富裕かつ有力な上流階級を選挙母体として選ばれました。
これは、代表制=民主主義の名のもとに、貴族制=身分特権を導入する仕組みでした。
市民の代表としての代表院と特権階級のサークルとしての元老院が並び立つという二重構造は、合州国という国家がもともとはヨーロッパに倣って、身分的特権と格差、つまり特権的上流層の優越とか富と権力の著しい不平等を「ごく当たり前」の条件として形成され、運営されてきたということを物語っています。