K−パックス 目次
宇宙人の心、それとも…
異星人、それとも…
こと座銀河の惑星K−パックス
プロットが身体を借りた人物
消え去ったプロット
別人格か、異星人か
おススメのサイト
異端の挑戦
炎のランナー
SF映画作品
カプリコーン ワン
ガタカ

異星人、それとも…

  あるとき(2001年)、ニュウヨーク市警察の警官がターミナル駅のコンコースで挙動不審の中年男性を保護した。旅行者のような素振りだが、荷物を持ち合わせてはいないようだ。
  警察官が誰何すると、
  「私は、地球人ではない。K−パックス星から来た」と答えた。
  「K−パックスは、地球から約1000光年離れた、地球人が《こと座》と呼ぶ星系にある惑星を中心とする文明で、連星の周囲を複雑な軌道で公転する惑星だ。
  私は、そこから光の波動によって移動する方法で、6年かけて地球にやって来た」
というのだ。

  冗談なのか、それとも精神状態に異常があるのか。扱いに困った市警は、市内の重度精神障害者専門の病院に、その男を送致した。精神分裂かひどい妄想に陥っているという判断からだ。
  その男を診断したのは、精神科医、マーク・パウエル。
  男は普通の体つき。性格は非常に穏やかで粗暴な行動をとる危険性はなさそうだ。しかしながら、会話の中身からすると、妄想はきわめて執拗・深刻で、治癒はかなり困難な見込みだった。
  しかし、話し方や話の内容は、きわめて理知的で博識だった。
  そこで、マーク医師は、その男を仮の名、プロット Prot と呼ぶことにして、治癒困難だが平穏な患者を集めた病棟に収容することにした。

  「プロット」とは、「プロテストする人」という意味なのか、それとも「守護者(プロテクター)」という意味か、あるいは「陽子」という意味なのか……。 Prot という省略綴りで表される「人を表す言葉」はいくつもある。たとえば protestant (異議申し立て者) protagonist (大物、主役)/ protector (擁護者)/ protege (被擁護者、患者) など。私としては、「被保護者」ないしは「要保護者」という意味のプロティージではないかと思うのだが。
  英語版字幕では、プロットのpはほとんど小文字で表記されているので、マーク医師が経過観察している患者=要保護者(プロティージ)だと思うのだが。

  さて、マークがプロットとの会話で聞き出したところによれば、
  プロットが光波に乗って宇宙を移動していたとき、地球上で救いを求めている「友人」の声を聞いたために、彼を救済するために立ち寄ったのだという。そのついでに、数年かけて地球を観測、観察し、故郷の惑星に調査報告を送ることになっているのだという。
  話の内容は変だが、プロットは穏やかで、出会った人の心に平穏をもたらす不思議な雰囲気を備えていた。精神科病棟の重度障害者の多くは「自分だけの世界」に心を閉ざしてしまいがちなのだが、奇妙なことに、プロットには誰でも打ち解けて心を開いてコミュニケイションできるようになった。
  K−パックス星人だという話を除けば、プロットの態度はいたって健康的で温和で、他人の話を穏やかに聞き取り、その話し振りには説得力があった。行動にも、ほかの精神病患者のような異常や偏向がなかった。

前のページへ || 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界