マークは、K−パックスという惑星に関するプロットの説明が説得的なので、宇宙物理学者や天文学者たちを集めてヒアリング調査をしてもらった。
彼の宇宙物理学に関する知識は、専門の学者から見ても素晴らしく正確で、どこの大学の教授にもなれそうなくらいだった。
そこで、科学者たちは「こと座」の連星系について質問を繰り出した。
これまでの宇宙観測や分析から得られた最高の成果を土台にして、連星――互いに公転し合う2つの恒星――の運動軌道や、この2つの恒星を公転する惑星系の運動について疑問をぶつけたのだ。
返ってきた答えは、科学者たちが驚嘆するほど正確で、しかも現在未解明の問題に関して、恐ろしいほど説得力ある解答を含んでいた。
科学者たちは、連星系を公転する、すなわち2つの巨大な重力の中心の影響を受けながら公転する惑星群の運動軌道や、そういう環境で生物が進化するための条件について、プロットが示した答えの卓抜さに感動した。
結局、科学者たちが出した診断の答えは、
「英語圏の一流大学か研究所の学者で最近、失踪した者がいるのではないか。本名を知れば、彼が書いた論文――きわめて高い評価を得ているはず――がいくつか見つかるはずだ」というものだった。
だが、少なくともアメリカでは、それに該当する人物はいなかった。
マーク医師たちが驚いたことに、プロットが来てから、重度病棟の患者たちは周囲の人間とのコミュニケイションができるようになり、失われていた記憶を回復し、幻想や妄想が薄れていった。健常者たちもストレスがきわめて軽くなって、以前よりも健康に朗らかになった。
彼の身体から、見えない電磁波あるいは健康を回復する波動が発生しているために、周囲の人間たちの――もちろん「健常者たち」も含めて――の心身の障害や苦悩が取り除かれていくようだった。
彼は、地球人の理解を超えた「宇宙人」で、特別な「治癒力」「癒しの力」があるのだろうか。あるいは地球人だとすると、そういう雰囲気や機能を備えた人がいるのかもしれない――やはり、ありえないか。
ところが、しばらくすると、プロットは、「あと少したつと地球上での目的=任務が予定通りに完了するので、当初の計画にしたがって、来たる7月27日に光の波動に乗って故郷のK−パックスに帰還しなければならない」と言い出した。
プロットはどこかに出ていくつもりだろうか。
マーク医師は、プロットとの会話を続けるうちに、アメリカ国内の地名――ニュウメクシコ州のある地方――を聞きだした。そこに住む男が、プロットの友人で深刻な苦悩を背負っていたが、会って癒しを与えたというような話だった。