ワールド・オブ・ライズ 目次
対テロ作戦の欺瞞性を暴く
本部オフィスと作戦現場
作戦の綻び
ヨルダンでの作戦
フェリスの苦悩と窮地
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本部オフィスと作戦現場

  イラクに派遣された工作員ロジャー・フェリスは、イラクで破壊活動を繰り返すアル・サイームと呼ばれるテロリスト――テロ組織の指導者――の割り出しと所在確認、逮捕もしくは殺害の任務についていた。
  一方で、ラングリーからこの作戦を指導するのは、作戦部長のエド・ホフマン。
  やり手で切れ者、辣腕の評判が高いが、陰険で自分勝手、傲慢不遜なキャリア官僚の政治屋ポリティシャンとしてもCIA内でその名が通っている。

  快適なラングリーのオフィスで、CIA局長やら国務省の顔色を見ながら決定・発動される作戦は、見栄えや聞こえは華々しいが、往々にして、イラクの都市や砂漠の作戦現場の具体的状況への配慮を欠いているということになる。
  だが、CIAの指揮系統のなかでは、ブッシュ政権の後ろ盾によって政治的に上位に位置づけられたホフマンの作戦指揮への批判や反論は許されない。彼によって見殺しにされた現場の工作員は数知れないという。
  「この俺が、世界の秩序と平和を守ってやっているんだぞ!」
  これがホフマンの日頃の言い草である。目いっぱい上から目線だ。


  ところが、イラクの現場で、軍事組織――作戦現地ではCIAは軍と同じ組織編成と運動形態を持つ――の情報系統の末端に置かれて、つねに命の危険にさらされながら活動するフェリスは、CIA本部の気紛れな作戦変更や現場の状況・要望無視を嘆きながら、軍事的・政治的目標の達成を迫られている。
  フェリスは、あるサイームから自爆テロを命じられたため、組織からの離脱を望んでいるニザルというインテリ青年から、身柄保護とアメリカへの亡命(移住)を条件にアルサイームに関する情報を提供したいという申し出を受けた。

  フェリスは、ホフマンにニザルの保護を要求したが、にべもなく拒絶され、
  「イラクの若造の1人や2人の命が何だ。強く出て口を割らせろ!」
  とはっぱをかけられた。ホフマンにとっては、イラクの民衆などは自分の出世とための手段でしかなく、彼らの命は紙よりも軽く扱われている。

  だが、CIAによる身柄保護の条件を拒否されたニザルは憤慨して、情報提供を拒否した。それでもフェリスは、CIA本部の協力拒否にもかかわらず、個人として何とかニザルを保護して誠意を見せたいとテロ組織に対抗して単独で行動した。
  その揚げ句、ニザルはテロ組織のメンバーに襲われて殺害されてしまった。しかも、フェリスはテロリストのメンバーに身分を知られてしまった。

  アラブ・中東地域の作戦現場とラングリーとでは、価値観や価値判断の基準は天地ほどよりさらに大きく隔たっているのだ。
  フェリスは、バグダード近辺でイラクの民衆と社会に溶け込んで、協力者や現地での部下を確保しながら、作戦遂行に必要な情報の収集を進めている。
  そこでは、現地の民衆や協力者・部下との信頼関係や信義が何よりも求められる。小さな情報のやり取りにも命がかかっている。生身の人間どうしとしての信頼関係がなければ、情報の収集も作戦への協力関係も得られないのだ。

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