ホフマンは作戦が成功すれば自分の功績にし、失敗すれば現場の責任にする。つまり、作戦失敗の責任をフェリスに負わせた。
その結果、フェリスはCIAの本部からも無視されようになってしまった。しかも彼が属するCIAはサラーム局長を騙しその権限を踏みにじったということになり、サラームから大きな憤慨を買ってしまった。板挟みになって苦しむフェリス。
そんなフェリスだが、ヨルダンのパレスティナ難民キャンプで献身的に働く女性看護師、アイーシャと出会った。アイーシャはイラン人で、姉とともに、頑迷なイランのイスラム革命体制からの迫害を逃れてヨルダンに移住し、そこで看護師として難民の救護・保護にあたっている。
フェリスは、そんなアイーシャを愛し始める。
ところが、フェリスとアイーシャが親しくなったことから、謀略が動き始めた。
イスラム過激派と思しき集団がアイーシャを拉致して、彼女の解放と引き換えにフェリスが自ら身を差し出せ、と要求してきた。フェリスは、自己犠牲を覚悟して、テロリスト集団の指定した砂漠に出向いた。
すると、この事件を嗅ぎつけたアル・サイームのグループがフェリスの拉致または殺害を企んで介入してきた。CIA工作員への攻撃を別のテロリスト集団の手柄にするわけにはいかないというわけだ。
フェリスは2つのテロリスト集団に挟撃されることになり、もはや絶体絶命かと覚悟した。
ところが、じつはアイーシャを拉致した集団はサラームが率いるヨルダン国家情報局と秘密警察の偽装で、アル・サイームをおびき出すために、偽装を仕組んだのだ。アル・サイームたちは罠にかかり、殺されたり捕縛されたりした。
こうして、ヨルダンの情報機関がアメリカCIAを騙し、出し抜いて、テロリスト集団のボスを捕縛し組織を壊滅させたのだ。CIAとホフマンは、国際諜報戦の舞台でコケにされたわけだ。それは、ホフマンの作戦指導能力の限界(無能さ)を暴露することになった。
あとで、事実を知ったフェリスは、虚偽と虚言、偽計にまみれた中東でのスパイ活動がすっかり嫌になった。とはいえ、CIA工作員の活動が嫌になったのであって、中東が嫌いになったわけではない。フェリスは人生設計を練り直すことにした。
フェリスが選択した決断は、CIAをやめて中東に根を張った生活を送ることにして、アイーシャや民衆とともに生活しようというものだった。
一方、ヨルダン情報部にこけにされたうえに、凄腕の部下――捨て駒でもある――を失うことになるホフマンは、おだてたり宥めたり、脅したりして慰留したが、フェリスは歯牙にもかけなかった。
アメリカの「対抗テロ活動」よさらば!
痛快な終幕ではないか。
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