ワールド・オブ・ライズ 目次
対テロ作戦の欺瞞性を暴く
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作戦の綻び
ヨルダンでの作戦
フェリスの苦悩と窮地
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作戦の綻び

  ところで、フェリスは大学時代からアラビア語とアラブ文化を学んできた。彼の心の底には、アラブの民衆や歴史への共感や敬意があった。中東での工作員の任務に就いたのも、アラブの人びとへの共感があったからだ。フェリスにとって、アラブの人びとは同じ大地の上でともに生きる友輩ともがらなのだ。
  ところが、ラングリーの本部の幹部ときたら、アラブの民衆は抵抗テロ戦を展開する「チェスボード」の上の捨て駒にしか見ていない。
  要するに、何より大事なのは「自分の業績」と「予算=権限の拡大」なのである。フェリスもイラクの民衆も、そういう官僚組織のなかで出世の手段にすぎない。自分の都合に合わせて扱いを変える道具でしかなく、いつでも切り捨てることができるものなのだ。


  かくして、ホフマンはフェリスを無視してアル・サイームの隠れ家追跡の作戦を展開した。その作戦は、CIA工作員としてのフェリスの正体がテロリスト側に筒抜けになる結果を招いた。
  それでも、フェリスたちはテロリストのキャンプを見つけて攻撃して、山のような資料(書類やCDなど)を発見した。ところが、敵はRPG(ロケット弾)でその隠れ家を攻撃して、資料の大半を灰と燃え滓にしてしまった。
  しかし、燃え残った資料から、あるサイームがヨルダンに潜伏している可能性が判明した。

  そう、まさにホフマンとラングリーの本部は、はるか上からフェリスたちの活動を「見おろして」いるのだ。小さなチェスの駒が並んだチェスボードを見おろしているように。もちろん、人びとの動きは見えるが、彼らの生活や互いの関係性を見ようとはしない。
  偵察衛星や無人偵察機を作戦現場の上空に飛ばして、地上での動きを完全にスキャニングしているのだ。そうしながら、フェリスたちに、偵察システムによって察知した敵の接近や罠の危険性を知らせているのだ。
  だが、狡知に長けた敵、テロリストの場合には、絶えず上空にも目配りをしているから、上空で銀色に輝く物体を発見したなら、ただちにCIAやアメリカ軍の存在・展開を察知してしまうことにもなる。

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