プラダを着た悪魔 目次
流行を生み出すカリスマ
美と装いの幻想ゆめを追う
カリスマは独裁者
編集の仕事と下働き
足の引っ張り合いと義理人情
アンディの転職
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足の引っ張り合いと義理人情

  欧米のファッション・ビズネスは――見かけが華やかで巨額の資金が動く世界だから――競争が凄まじい世界で、それゆえ同業者の間の足の引っ張り合いも激しい。「私が一番だ!」という自己主張・自己表現の競い合いだから、いわば必然の理だが。
  足の引っ張り合いや自己主張のぶつかり合いは、ミランダとアンディのいる 《ランウェイ》 編集部の内部や周囲でも繰り広げられている。一方で、昔風の「徒弟制」にも似た「滅私奉公のようなしきたり」や「義理と人情の売り買い」という古風な現象も続いている。だからこそ、ミランダは世間の常識から外れたような専制君主振りを発揮するのだろう。

  たとえば、編集部のディレクターのナイジェルは、ミランダのが要求する無理難題――試作品の製造の進行管理やカメラマンの手配などの段取り――に対して、涙ぐましいほどに奮闘して、次つぎに企画を実現していく。女王にひたすら従う侍従長のような忠誠心を見せる。
  彼は職人工房的な師匠=徒弟関係の良さを信じていて、今続けている自己犠牲のような努力が必ずいつか報われると信じているのだ。昔の服飾工房の徒弟のように、ひたすら師匠を尊敬して。
  ナイジェルの奮闘はやがて実を結び、ミランダの推薦を受けて、このところ飛躍的に売り出してきたファッション界のスター、ジェイムズ・ホルトのアートディレクターになる運びとなった。


  一方、競争と足の引っ張り合いの苛烈さは、 《ランウェイ》 編集責任者からミランダを外す編集部内での「ちょっとした陰謀」に示される。この陰謀とは、ミランダを編集長のポストから追い出して、ジャクリーン・フォレットが取って代わろうというものだ。
  アンディはその陰謀を、当たらに付き合い始めたボーイフレンド、ハンサムなクリスチャンから聞き出した。やり方が汚いと思ったアンディは、ミランダにその陰謀を告げた。
  ミところが、ランダは陰謀に対する反撃を周到に準備していたらしい。とはいえ、ジャクリーンを潰すことはなかった。むしろ、ジャクリーンの手腕を高く買っていたので、ナイジェルの代わりにジェイムズ・ホルトのアートディレクターに推薦して転職させた。ミランダはジャクリーンの能力を買っていたので、彼女との確執を、遺恨を残すような形で終わらせないような「落とし所」を見つけたのだ。

  それを知ったナイジェルは落胆した。そして、アンディは、自分の告げ口がナイジェルのキャリアアップを邪魔してしまったと悔やむ。けれども、ナイジェルはミランダを信じ続け、いずれ報われる時期が来ると考えて編集部での「縁の下の力持ち」の役を担い続けることにした。
  この経過には、徒弟関係とか義理人情のような関係がアメリカのファッション界の最先端にもあるのだということを物語っている。

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