「サンジャック」オマージュ 目次
宗教、日常生活、巡礼旅
「建前」と「本音」
キリスト教は一神教ではない
聖人列伝の体系
サンティアーゴへの道
人は巡礼をする動物である
長い冒険旅行
聖ヤーコブ伝説
何を求めて巡礼の旅をゆくのか
「聖なる巡礼路を行く」
 
サンジャックへの道 本編

長い冒険旅行

  《サンジャックへの道》がフランス映画であることについては、私には「やはりな」と思うところがある。いかにもそうだろう、という感じがする。
  フランス人といえば、徒歩にとどまらず、自転車や自動車、さらにはスキーやスノウボードなどによる遠距離の冒険的レイスを仕組み企画したがる傾向が見られる。というか、自転車ロードレイスの〈トゥール・ドゥ・フランス〉、〈パリ=ダカール耐久自動車レイス〉〈ルマン〉などを筆頭に、マウンテンバイクによる峻厳なアルプス越えレイス、ピレネー越えレイス、徒歩や走りによるトレイル・ラン型の山岳越えレイス、アンデス縦断徒競争など、有名な競走が数え切れないほどある。
  ヨーロッパ人はいったいにそうかもしれないが、ことにフランス人は長い耐久レイスの旅への挑戦がことのほか好きなように見える。
  してみれば、今日とりわけてフランスからの《サンティアーゴ巡礼》が活発になったのも、むべなるかな。

  さて、フランスのどこかを出発点とする限り、エスパーニャの東の端から西の端まで、ピレネーからガリシア地方の北西部、サンティアーゴ・デ・コンポステーラまで歩く巡礼の道カミーノの距離は1000キロメートルを超えることになる。基本コースとしては、エスパーニャとスランス両国にまたがる旅で、フランスの中央山岳地帯や北西部の町から出発するコースが多いという。

  ところが、さらにまだ遠くのパリやシャンパーニュ、さらにはフランドゥルからベルギーとの国境を超えて旅をしたり、さらに遠くアムステルダムからネーデルラント国境を超えてベルギーを抜けて旅する人びともいるとか。あるいは、ドイツ国境の向こう側、ライン地方やザクセンとかフランケン地方から始まる旅もあるし、遠くははるかポーランド(東欧)やハンガリア、ルーマニア(南欧)からサンティアーゴに向けて出発する遍路旅もあるという。
  気が遠くなるような、4000キロメートル、6000キロメートル以上におよぶ旅となる。
  バルカン半島からだと、イェルサレムへの巡礼の方が、まだずっと近いだろうに。それでも、遥かヨーロッパを横断するような巡礼に挑戦する若者もいるらしい。

  これだけの長い旅を1回の旅行で達成するのはかなり難しい。そこで、日本の四国巡礼のように、巡礼の区間をいくつかに分割して、今回は「ここからここまでの○百キロメートル」「次の旅では・・・」と積立て貯金方式で完遂する人たちもいるとか。もちろん、夏のヴァカンスを利用する人もいる。

  ところで、フランスでもエスパーニャでも――基本となるコースは決まっているが――巡礼旅のコースの取り方はいろいろオプションがあるらしい。とりわけコースが多様化しているのは、フランス国内だという。
  映画《サンジャックへ道》では、フランス中央高地のルピュイから出発したが、そのほかにナントやボルドーから、あるいはブルターニュ地方から始める場合もあるし、ルピュイからのコースで始めたが途中からギュイエンヌの大西洋側に道を取って、ナントやボルドーからのコースに乗り換えることもあるようだ。
  この映画でも、ピレネー越えのコースの取り方、そのあとのコース取りで、ルピュイからのコースの標準からはずれて歩いたようだし・・・。いや、自由と個性を重要視するヨーロッパでは、そもそも標準コースがないということかもしれない。

前のページへ || 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済