ワグ ザ ドッグ 目次
しっぽよ犬を振り回せ
原題と原作について
見どころ
現職大統領はロリコン
争点をプロデュースせよ
トラブルシューター
演出はプロデューサーにまかせろ
演出される「アルバニア危機」
カウンタームヴメント
手を変え、品を変え
CIAとの対決
「シューマンを救え!」
「アメリカはシューマンを悼む」
大統領、再選を果たす

しっぽよ犬を振り回せ

  アメリカの現職大統領が選挙キャンペイン中に、大スキャンダルを隠蔽するためにマスメディアを駆使して、次から次へと虚偽情報を報道させ、市民の関心を事実から遠いところへもっていこうとする策謀を描くブラック・コメディ。1997年作品

原題と原作について

  原題は Wag the Dog で、直訳だと「犬を振り回せ」となるが、たぶん《 , Tail ! 》という語句が省略されている。これはアングロ・アメリカン風の言い回しで、犬の尾が――あるいは尾をつかんで――犬の身体を振り回すということで、論法を本末転倒にして論点をそらし、相手をごまかしたり困惑させたりすることを「ことわざ風」に表現した警句。
  ここでいう尻尾は、犬全体から見れば枝葉末節の部分ということになり、そういう本体から離れた小さなことに関心を向けさせ、どんどん論点を逸らしていって、問題の核心を見えなくさせるためのメディア操作ということになる。つまり、どうでもいいことで、大事な本題を覆い隠す策謀だ。

  原作は Larry Beinhart, American Hero, 1993 (ラリー・ビーナート著『アメリカン・ヒーロー(のつくり方)』、1993年刊)で、これはメディア操作による「ヒーローづくり」の謀略についての実証的な理論的研究・ノンフィクションだったが、2004年に同じ作者によって映画と同名の小説として公刊された。

見どころ

  マスメディアで大々的に報道される合衆国大統領選挙。各候補陣営によるマスメディア操作・報道合戦も熾烈だ。おうおうにして、相手のスキャンダル暴露合戦の泥仕合になる。
  予備選挙も含めて、選挙戦は劇場化=視覚化され、政治の本当の争点――政策課題や民衆の要求――が後回しになる場合が多い。
  この作品は、大統領選挙を徹底的に辛辣に茶化し、マスメディアでの「扇動合戦」ともいえる選挙戦の1つの側面を描いたもの。映像とメディアを利用して、候補者のスキャンダルを民衆の目から逸らし、虚偽の争点をでっち上げても、勝利をめざす茶番劇が繰り広げられる。

  マスメディアの発達を基礎とする民主主義は、ともすれば、こういう状況を招きかねない――それでも一党独裁や専制政治よりはましだが――と警告する物語。

  話は下世話で、筋立てはあまりに単純なので、「あらすじ」は省略して物語の本題に入ることにする。

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