渚にて 目次
核戦争による人類の滅亡
孤独な原潜
最後に生き残った人びと
サンディエーゴからの信号
サンディエーゴ
海辺で原潜を見送る
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最後に生き残った人びと

  話を戻そう。
  くだんの潜水艦は、ハッチを閉鎖したまま、せいぜい潜望鏡で外界を観測しながら、フィリピン、インドネシアなどを回航しつつ、港湾や沿岸の状況を観測し続けた。しかし、どこでも、生きた人類や動物は見られなかった。
  そして、オーストリアの東岸地帯で人類が生き延びていることを確認して、メルボーン軍港に停泊することになった。
  そこで、オーストリア当局によって、北半球の人類と文明が滅亡したことを知らされた。もちろん、合衆国も滅亡し、US海軍も消滅した以上、潜水艦を管轄する指揮系統も失われている。
  ということで、オーストリア海軍の指揮下で活動することになった。

  核汚染はしだいに南半球にもおよんできていて、数か月後にはオーストラリア北部のカーペンタリア湾やケイプヨーク半島などが死の灰に覆われ、オーストラリアの南端もあと6か月後には人類が生存不可能な放射線の量に達するものと予測された。

サンディエーゴからの信号

  ところが、北アメリカのサンディエーゴ――アメリカ海軍最大の太平洋艦隊の軍港と海軍基地がある――から数か月間にわたって無線電信の信号が送り続けられていた。信号は不規則で、大半は意味不明なモールス信号だったが、ところどころに英語の単語が混じっているようにも見えた。
  人類が絶滅した都市から、いったいなぜ電信が送り続けられているのか。生き残った人類がいるのか。
  オーストリア海軍は、アメリカの原潜に北アメリカまで航行して調査する任務を与えた。加えて、南氷洋にも回航して、人類が生存可能な環境があるかを探査することになった。

  だが、海流と大気循環のため南氷洋――南極大陸の縁辺部――でさえ、すでに放射能が蔓延していて、生物が生き延びる条件はなかった。であるとすれば、北半球に人類が生き残っているはずはありえなかった。
  それでも、ただ滅亡のときを何もせずに待つということもできなかった。原潜は、北上を続けて、1か月半後にはカリフォーニア州の太平洋沿岸に到着した。
  ロサンジェルスは死の灰に埋もれ、サンフランシスコもすっかり死に絶えていた。生物が生き延びる条件はなさそうだ。
  だが、水兵の1人が原潜から抜け出して上陸した。故郷の町で死にたいという願望からだった。水兵は、遠ざかる原潜を埠頭で釣り糸をたれながら見送ることになった。まさに海岸ビーチで迫る死を待ちながら、遠ざかる原潜を見送ることになった。

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