映画作品の原題は、The Verdict で、意味は、裁判での評決、とくに陪審員制の裁判での評決。1982年公開。
原作は、Barry Reed, The Verdict, 1980(バリー・リード著、『評決』、1980刊年)
見どころ:
バリー・リードの原作小説にもとづく優れた法廷もの映画。
現代アメリカ(1970年代)の医療過誤問題をめぐる裁判・法廷闘争を描いて、巨大病院組織の病理や、司法をつうじての権力構造、権力闘争の1断面をみごとに切り取った作品。
現代アメリカの法廷スリラーものは、ジョン・グリシャムをはじめとして数多いが、この原作は古典的名作に属する。
アメリカ社会で展開されるすさまじい司法闘争、利害闘争の現実を描く素晴らしい作品だ。
アルコール依存症の弁護士、フランク・ギャルヴィンは、法廷弁論を避けるように自堕落な生活を送っていた。
生活費とアルコール代は、新聞の死亡広告蘭に載った人物の家族に取り入って、遺産相続をめぐる法手続きの手数料をせしめるというケチな仕事で稼いでいた。
が、あるきっかけで、有名大病院の医療過誤をめぐる裁判闘争を引き受けることになった。医療過誤で「植物人間」になってしまった女性の妹夫婦がこの病院を相手に起こした訴訟代理人を務めることになったのだ。
調査を始めたギャルヴィンは、病院側の大きな過失を突き止めた。だが、病院側は、高額の報酬で有力法律事務所を雇い、鉄壁の弁護団を組織した。
ギャルヴィンは、かつて自分自身が大きな組織の権力によって陥れられ押し潰された過去がトラウマになり、現実から逃避していた。
だが、大病院組織の権力が身体機能を奪われた女性とその家族の尊厳と権利を踏みにじろうとする醜悪な実態に強い憤りを感じた。
ギャルヴィンは、おのれの再起更生を賭けて、この勝ち目のない困難な法廷闘争に挑んでいった。
病院側弁護団は事実を知る人間を隠して、自分たちに有利な証拠だけが法廷に提出されるように仕組んでいった。
だが、病院から追われた女性看護師、ケイトリンの証言によって、病院側は重大な過失を隠蔽していた事実が明らかになった。麻酔事故後、調査票を改竄したのだ。
この改竄は病院側の過失責任を隠蔽するもので、全身麻痺に陥ったデボラーへの手厚い救済を拒む結果を生んだだけでなく、改竄の事実を目撃した誠実な看護婦を医療の世界から追放して彼女の1人の尊厳と天職を奪ったのだ。一つの嘘は、止めどのない嘘の連鎖を呼ぶことになった。
医療過誤隠しの醜悪な実態が暴かれた。
陪審員団は、全員一致でデボラー=ギャルヴィン陣営の勝訴を評決した。そして、賠償金の額を原告の要求額よりもずっと高くすることを求めた。
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