コンドルの通報を受けたニューヨーク支局次長、ヒギンズは、状況把握のためにただちに要員たちを文学史協会に急派した。数分後、協会の建物の前に「ビル清掃会社」の車がやって来て、清掃係が2人、清掃用具を抱えて建物に入っていった。彼らはすぐに車に戻ってきて、通信システムを使ってヒギンズに連絡を入れた。
「仕事の質」としては「最高」で、6人全員が射殺されている、と。
だが、6人だということは、コンドルのほかに1人欠勤者がいることになる。つまり、病欠のハイデッガーだ。
その頃、ターナーはハイデッガーの住居(共同住宅)に向かっていた。
彼の部屋のドアの鍵は開いていた。そして、ハイデッガーはベッドで死んでいた。身体に多数の銃弾を浴びていた。ターナーは急いで部屋を出たが、おりしもそのとき共同住宅の入り口にニューヨーク支局の要因2人が到達した。
疑心暗鬼になっているターナーは、敵かもしれないと身を隠し、要因の目を盗んで住宅から逃げ去った。
ターナーは今度は自分のアパートに行ってみたが、そこにも2人の「友だち」が訪れていたことがわかった。アパートの管理人の女性とアパートの前で会って、「あなたのことをよく知っているお友だちに鍵を渡した」と告げられて、そのことを知ったのだ。ターナーは、そこからも逃げ出した。
さて、ヒギンズ次長のところには、CIA本部17課のウィックス課長とその補佐官が訪れた。いやに手回しがいい。彼らは、自分たちのやり方にニューヨーク支局の動きを持っていこうとしているらしい。
そこに、コンドルからの電話が入った。ヒギンズは、救出・保護の手立てを告げようとした。そこに、ウィックス課長が「私が行く」と割って入った。
だが、疑心暗鬼に陥ったコンドルは、CIAの内部に裏切り者がいるかもしれないという直感が働き、CIAとの接触を渋った。そこで、ウィックスは、ターナーの親友で大学の同窓、CIAニューヨーク支局財務会計課に勤務するサム・バーバーを同行すると申し出た。結局、この方法であるホテルの裏の通りで落ち合うことになった。
ターナーは約束の時刻よりもかなり前にやって来て、用心深く落ち合い場所の様子を窺っていた。やがてサムが現れた。だが、もう1人、ウィックスの動きが不自然だった。物陰に身を隠すような位置取りなのだ。
それでも、ターナーは一歩一歩慎重にサムの近くまで進んでいった。ところが、距離10mくらいまで近づいたとき、いきなりウィックスが発砲してきた。ターナーも銃を取り出して撃ち返しながら逃げ出した。その銃弾が偶然、ウィックスの身体に当たり、重傷を負わせた。そのため、ターナーは逃げ切ることができた。
だが、倒れたウィックスは、サムの喉元に銃撃を浴びせて命を奪ってしまった。事実の目撃証人を消すためだ。
ターナーは繁華な商店街まで逃げて来て、スポーツ用服飾店のなかに入り込んだ。そこで偶然見かけた若い女性、キャシー・ヘイルを銃で脅して車ごと「拉致」した。隠れ場所と移動手段を手に入れるためだ。
とにかく、彼女のアパートの部屋に強引に入り込んだ。そこで、銃を片手にだが、CIAのIDカードを見せ、ターナーは自分がCIAの文書解析要員であり、何らかの謀略に巻き込まれて暗殺者たちに追われ、生命を脅かされていることと説明した。が、女性は脅えていて、納得しなかった。
それでも、強引だが紳士的でもあるターナーの態度を見ているうちに、彼の置かれた立場は嘘ではないらしいと思うようになった。だが、そんな暴力的な事件に巻き込まれるのはいやだと拒否した。
彼女はその日、ヴァーモント州の山岳地帯のスキー場に向かうつもりだった。スキー場のホテルでボウイフレンドと落ち合う予定だった。そのためにクロスカントリー用のスキージャケットを買いにいって、事件に巻き込まれたのだ。