コンドル 目次
CIAの迷走
原題と原作について
見どころ
あらすじ
CIAの「長い腕」
ジョウ・ターナーと「文学史協会」
「中東の政変」
白昼の殺戮劇
監視者の目
横着が身を助ける
コンドルの逃走
孤立するターナー
ニューヨーク支局の動き
疑心暗鬼、そして潜伏
黒幕と暗殺者
情報操作
執拗な暗殺者
事件の真相を追え
CIAの隠された闇
冷酷なCIAの方針
ターナーの反撃
陰謀の黒幕を探れ
CIAを揺さぶれ
謀略の主を追いつめろ
国家権力と市民の良識
映画の状況設定の背景
ヘゲモニー構造の転換
石油エネルギーの時代
アラブ諸国の抵抗の経験
産油諸国の反乱
USAヘゲモニー構造の再編

陰謀の黒幕を探れ

  ターナーは、街中のAT&Tの電話工事現場から検査用機器のセットを失敬し、まずホリデイインの地下の電話自動交換ルームに潜入した。そこで、ジョウバーが宿泊している部屋の電話回線に検査用送受話器の端子を接続した。そして、ジョウバーの部屋の電話機に送信した。
  そして、「俺は情報屋だが、コンドルは安全なのかね」と意味ありげなメッセイジを送りつけた。
  そのメッセイジが、現在かかわっている事件の核心に触れるものだけに、ジョウバーは驚愕し不安に陥った。そこで、約束=原則を破って、「雇い主」に電話を入れて、「包囲網がかなり狭まってきた。どうするんだ」と問い詰めた。

  ターナーが手に入れたかったのは、ジョウバーが相手の電話番号を入力するために押したプッシュフォンのナンバーキイの一連の音声だった。
  プッシュフォンのすべてのキイは、それぞれ別個の音階の音声を発するように設定されている。その一連の音声を録音して、AT&Tの専門部署に問い合わせれば、音声分析によって電話番号がわかるようになっている。もちろん、会社の専門の従業員だけに許可される調査なのだが。
  ターナーは、この制度を利用して、ジョウバーの電話先の住所と氏名を割り出した。

CIAを揺さぶれ

  次にターナーは、今はなき「世界貿易センタービル」のやはり自動電話交換機ルームに侵入した。そこには、CIAのニューヨーク支局が置かれている。当然、「普通の電話」の回線は、このビルの自動交換装置をつうじて外部の電話回線と接続されることになる。つまり、それについては、専門技術があれば、自動交換装置からアクセス(割り込みや傍受など)ができる。
  だが、あの巨大な高層ビルには、何千もの電話回線と端末機がある。ベル研究所の専門エンジニアの経験がなければ、かなり面倒な仕事だろう。
  このあたり、ターナーの経歴設定が巧みだと感心する。

  さて、ターナーはCIAのオフィスで使用してる回線に、検査用装置を短絡させて、あたかも外部からの通話を装って、CIAへの通信を入れた。CIAは逆探知システムを準備していた。
  ターナーはヒギンズを呼び出した。そして、駆け引きと腹の探りあいをしたが、この時点ではさほど重要な情報は入手できなかった。自分に対してCIAがどう対応しようとしているのかも判断できかねた。
  だが、ホテル・ホリデイインの817号室に文学史協会とターナーの暗殺を請け負った殺し屋がいる、という情報をヒギンズに伝えた。おそらく、このあとの行動にさいして、あの殺し屋の関与ないし妨害を「除去」させるためでもあった。
  しかし、妨害の排除や状況のコントロールにかけては、CIAはターナーよりもずっと「上手」だった。

  他方でターナーは、CIAのなかでは「今回の謀略」に関与していないと見られるヒギンズに直接コンタクトして、情報を引き出そうとした。
  キャシー・ヘイルをCIAの人員募集への応募者に見せかけて、世界貿易センタービルのCIA支局に入り込ませた。そして、ヒギンズの在室と外出のタイミングを確認して、昼食に寄ったカフェから連れ出し、車に乗せて人気のない場所まで連れ出した。
  そこで、今回の事件の真相を聞き出した。
  コンドルが文献から解読した「クーデタ作戦」は、海外作戦部中東部長のアトウッドが実行寸前までシミュレイションし、準備していた。ところが、コンドルの報告書がニューヨーク支局から本部に回されると、手を染め始めた「謀略」の痕跡を消し、またそれを察知した文学史協会の職員を抹殺することにした。
  報告書は謀略一味のウィックス課長が握りつぶし、その危険性をアトウッドに知らせて、この作戦を先導した。

  だが、ヒギンズの言い方では、作戦自体を検討し、実行可能性をシミュレイションするのは、別段悪いことではない、という。むしろ、国家から求められている正規の任務の1つだ、と。それが、人びとの税金を大量に注ぎ込んで、しかも市民・民衆からは極秘に進められているのだ。
  一般市民の視点から、CIAという特殊な国家装置を制御し統制する仕組みはどこにもない。CIAの動きの正誤を判定するのは、ほかならぬCIA自身なのだ。

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