コンドル 目次
CIAの迷走
原題と原作について
見どころ
あらすじ
CIAの「長い腕」
ジョウ・ターナーと「文学史協会」
「中東の政変」
白昼の殺戮劇
監視者の目
横着が身を助ける
コンドルの逃走
孤立するターナー
ニューヨーク支局の動き
疑心暗鬼、そして潜伏
黒幕と暗殺者
情報操作
執拗な暗殺者
事件の真相を追え
CIAの隠された闇
冷酷なCIAの方針
ターナーの反撃
陰謀の黒幕を探れ
CIAを揺さぶれ
謀略の主を追いつめろ
国家権力と市民の良識
映画の状況設定の背景
ヘゲモニー構造の転換
石油エネルギーの時代
アラブ諸国の抵抗の経験
産油諸国の反乱
USAヘゲモニー構造の再編

冷酷なCIAの方針

  一方、CIA本部の首脳は、ワシントンの秘密拠点(国際作戦部)にヒギンズを呼び出した。事件の調査と方針を検討するためだ。会議は2度にわたった。この秘密事務所は、表向きファイヴ・コンティネント・インポートという貿易商社の体裁を取っていた。
  最初の会議で問題になったのは、事件をどう見るかだ。とりわけ難しいのは、ウィックスが射殺されたことだった。しかも、サム・バーバーは、防弾ヴェストが保護する部位を避けて喉元を打ち抜かれて殺された。射撃の技術は並外れている。
  会議参加者の誰もが、コンドルの仕業と見ていた。そして、彼はこれまでのところ、CIAの探索網を逃れて巧みに身を隠している。だが、ターナーは、いわゆるフィールドエイジェント(現場工作員)ではないし、そのための訓練を受けていない。とすれば、彼には隠れた訓練キャリアがあって、ダブルエイジェントではないか、と幹部は疑った。

  ヒギンズは、ターナーは身を守り潜伏する術をすべて「読書」で身につけたのだ、と説明した。彼には軍歴があるが、通信工兵隊の技術要員にすぎず、いっさい戦闘訓練は受けていない、と。ただし、彼が外部組織に買収されて、CIAを裏切る可能性がまったくないとはいえない、とも見ていた。
  だが、彼はウィックスにも疑念を抱いていた。CIAの内部に反目や権力闘争があって、今回それがこんな形で噴出したのかもしれない、と。

  2度目の会議では、かなり事件が伸展してからだった。
  この時点で、入院中のウィックスは、生命維持装置が何者かに取り外されて殺されていた。これで、CIAの内部の暗闘、どこかの部署の暴走・突出があるらしいことも察知できた。
  本部の首脳は、いずれにしてもCIAという国家装置を守るために、内部の混乱を外部に知られるわけには行かない、そのためにはコンドル=ターナーについて「しかるべく処理する」ようにヒギンズに命じた。内部の迷走が暴露されスキャンダル化しないように、関係者全員を抹殺することにしたのだ。

  ヒギンズは事件を「処理」するために、問題を検討した。
  現在までの内部調査(監察)の結果では、CIAの作戦管理部の中東部で何やら暴走が起こったらしい。中東部の作戦部長は、机上作戦(シミュレイション)としてコンドルが指摘した国での政変を企図し、実行可能な準備を進め、作戦遂行の直前まで事態が進んでいたらしい。もちろん、作戦管理部には内密に。
  ところが、コンドルの報告が提出されたため、急遽、計画を中止し、あらゆる証拠を隠滅した。だが、文学史協会のメンバー(とくにコンドル)はこの暴走の一端を知っているため、外部の「専門家」にまかせて「消す」ことにしたのだ。

ターナーの反撃

  ターナーもまた、もっと輪郭が曖昧だが、同じ結論に達していた。
  いずれにしろ、このままでは、CIAの組織防衛本能によって、自分自身が追い詰められ、完全に組織の内部に絡めとられるか、あるいは抹殺されてしまうかのどちらかになってしまう。
  彼のパースナリティは、知識の習得と応用能力にすぐれていること、プラス強い反骨精神=独立心や独創性、批判精神、そして行動力に富んでいること。それはまた、組織や権力に依存したり屈服することを強く嫌悪するという性向に結びついてもいた。
  というわけで、自ら生き延びるために反撃を開始した。

  彼は、今の仕事=読書や文献解析活動によって、CIAの組織や行動スタイルを知り、スパイ活動のいくつかのノウハウを身につけていた。そして、陸軍の通信工兵隊とその後のベル研究所(当時世界最大のIT企業AT&T)勤務経験で、通信装置やコンピュータに関する技術や知識はかなり先端的かつ実践的なレヴェルに達していた。

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