コンドル 目次
CIAの迷走
原題と原作について
見どころ
あらすじ
CIAの「長い腕」
ジョウ・ターナーと「文学史協会」
「中東の政変」
白昼の殺戮劇
監視者の目
横着が身を助ける
コンドルの逃走
孤立するターナー
ニューヨーク支局の動き
疑心暗鬼、そして潜伏
黒幕と暗殺者
情報操作
執拗な暗殺者
事件の真相を追え
CIAの隠された闇
冷酷なCIAの方針
ターナーの反撃
陰謀の黒幕を探れ
CIAを揺さぶれ
謀略の主を追いつめろ
国家権力と市民の良識
映画の状況設定の背景
ヘゲモニー構造の転換
石油エネルギーの時代
アラブ諸国の抵抗の経験
産油諸国の反乱
USAヘゲモニー構造の再編

産油諸国の反乱

  要は、世界の諸強国と資本による各個撃破を許さないように、迅速に結集・同盟して、同時に反乱を仕かけるということだ。反乱勢力の凝集性と作戦の持続性・首尾一貫性こそが、戦果をもたらすのだ。
  産油諸国での国有化や国営化は、少なくとも原油採掘・生産に関する諸活動を一括して統括・管理するような国家装置の介入システムをつくり上げていた。

  その6年後の1973年、エジプトとシリアの連合軍がイスラエルに攻撃を仕かけた(ヨム・キプール戦争)。が、やはり性能や技術にまさるイスラエルの兵器と巧みな戦術、精強な軍隊は、アラブの連合軍を撃退した。
  これに対して、OAPECはエジプト・シリアと連合して、イスラエルを支援する(とりわけこの時期にイスラエルに補給物資を供給する)アメリカと西ヨーロッパ諸国に対して原油輸出の禁止措置を発動した。
  このときを見計らったかのように、OPEC諸国(OAPEC構成国も含む)は同盟して、原油出荷(輸出)価格を一挙に引き上げた。世界市場での原油価格は73年1年間だけで3~4倍になった。
  当時、アメリカの頼もしい同盟者であった、イランのパーレビ国王とその政権も、アラブとOPECの反乱を支持し、原油価格の引き上げに積極的に取り組んだ。いわば、アメリカが育て上げた諸勢力が成長して、アメリカを中心とする世界の権力に歯向かったわけだ。

  西側諸国は危機に直面した。アラブ諸国の原油の禁輸措置とOPECによる原油出荷価格の引き上げで、それまで安価な石油製品の供給を土台として持続していた西側諸国の急速な経済成長(平均年5~6%)は、一気に停止し、深刻な停滞に陥った。
  石油は、化学樹脂、電気・機械製造、運輸をはじめ農業など、あらゆる産業の不可欠のエネルギー源ならびに原料素材となっている。したがって、原油価格の急騰は、あらゆる生産物価格の急上昇をもたらした。世界市場の価格体系は構造転換した。
  価格高騰(インフレイション)の一方で、経済は停滞(スタグネイション)する。その同時進行(ディレンマ:二重苦)は、スタグフレイションと呼ばれた。
  スタグフレションはおよそ15年間続くことになった。

USAヘゲモニー構造システムの再編

  この事態が大きな要因の1つとなって、パクスアメリカーナの構造転換、大がかりな再構築が避けられなくなった。アメリカのヘゲモニーの終焉ではない。再組織化である。
  アメリカの世界覇権の危機が、当時、盛んに論じられたが、その覇権はいまでも続いている。危機に陥ったのは、その時代まで効果的だった、アメリカの特殊なヘゲモニー装置であって、ヘゲモニーそのものではなかった。
  それにしても、アメリカはそのとき深刻な危機に直面していたわけで、国家の中枢的装置であるCIAが、非常手段も含めてあらゆる術策を講じても世界市場での石油供給システムでの最優位を回復しようとしても、不思議ではなかった。

スノウデン事件

  アメリカの諜報機関や安全保障組織が、出版物を含む世界中の情報システムやIT通信システムから情報収集・傍受していることは今や常識だ。だが、先頃、CIAとNSAに勤務していたスノウデンという若者が、これらの機関が秘密裏に同盟諸国の政府・閣僚の通信傍受さえおこなっていた事実などを暴露した。
  エシュロンには同盟諸国が参加協力しているわけで、さもありなんという感じだ。
  ナチス時代の苦い経験をもち、原則にはうるさいドイツではこの問題が幅広い市民による批判を呼び、メルケル政権も動揺したことが伝えられている。
  また、アメリカの多くの主要な情報通信企業が、NSAやCIAによるネットでの情報傍受に協力し、場合によっては情報提供していることも暴露された。そのため、多くの国では、アメリカのネット会社とのサーヴィス提携をためらうようになっているとか。
  だが考えてみれば、インターネットの技術そのものがアメリカの軍情報活動やその技術開発から生み出されたものである以上、その開発者が自ら生み出した技術の裏技や上位の管理技術をもって、ウェブの世界の情報を傍受解析するのはたやすいことではないだろうか。
むしろ、世界の市民の側が、ディジタル化された情報通信の世界ではアメリカの諜報組織によって傍受されていることは前提として割り切って利用した方がいい。大事な情報はアナログ的に暗号化してやり取りした方がいいだろう。

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