MI6 沈黙の目撃者 目次
「国益」と謀略のはざまで
見どころ
麻薬密輸ルート
偽装潜入の目的
麻薬貿易と英国エリート
MI6の作戦の綻び
絡み合う策謀
核爆発
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MI6の作戦の綻び

  さて、話を本題に戻そう。
  ところがあるとき、セルゲイの組織はロンドン港に一度に数百キログラムという桁違いに大量のヘロインを輸出したために、一躍スコットランドヤード外事公安部の標的となってしまった。こうして、イアンもロシアンマフィアと癒着し腐敗した外交官として目をつけられてしまった。
  だがチャールズとしては、SIS(MI6)は、国家組織のなかではロンドン警視庁よりも「格上」だという自負があったから、このままイアンによるアンダーカヴァー作戦を継続しようとした。作戦はあくまで機密事項だとして、警察には情報を秘匿した。
  そのために、首相府や外務省をつうじて警察に圧力をかけた。だが、スコットランドヤードも、犯罪抑止と国内の治安活動での優越を自負していた。そのため、自分たちの権限と権力が抑制され切り縮められることに反発し、イアンの拘束と証人保護プログラムを継続した。

  イアン・ポーターはセルゲイに取り入って、その結果、小型核爆弾の取引で中心的な役割を割り当てられることになった。セルゲイはイアンに、起爆装置の起動の鍵と暗証番号を託した。暗証番号はセルゲイ自身も知らなかった。
  そうなると、セルゲイが大金と引き換えに小型核兵器(スーツケイス)を買い手に引き渡すさいにはイアンが立ち会うしかないわけだ。
  ところが、イアンがブリテン警察に逮捕され、証人保護プログラムを適用されたことから、セルゲイは何とかイアンを奪回しようと画策し始めた。


  一方、MI6のチャールズとしても、ロシアンマフィアの核兵器取引にイアンをふたたび潜入させるためには、警察による保護と監視のもとからイアンを脱出させなければならなかった。そこで、チャールズは部下のシャノンを使って、スコットランドヤードからイアンの証人保護手続きに関する情報を聞き出させて、ロシアンマフィア組織に流した。
  警察の機密情報をMI6が犯罪組織に横流しするわけだ。
  そうする一方で、チャールズはイアンに、オーストリア警察の保護と監視の目から何とか逃れ出て、脱走するように指示した。

  イアンがオーストリアのシドニー警察によって保護と監視を受けていることを知ったセルゲイは、ヴラディーミールをつうじてシドニーのロシア系移民社会のマフィアの首領にイアン奪回を命じた。この作戦の監視のために、セルゲイは弟にニコライをシドニーに送り込んだ。
  イアンは、いったんは逃げ出すのに成功した。そのすきに、携帯電話で自分の隠れ場所をチャールズに告げ、その情報はさらにロシアンマフィアに流れていった。
  こうして、シドニーのロシアンマフィアのボス、デミトロフ(ディミトリ)は、イアンの隠れ家を襲撃したが、警察官によって阻止されて失敗した。
  だが、オーストリア警察は、悪辣なロシアンマフィアがイアンを奪回しようと襲撃したことから、スコットランドヤードがイアンの保護要請にさいして示した――金融犯罪への関与という――理由を疑い始めた。

  マフィアによるイアン奪回の可能性に見切りをつけたチャールズは、SISの部長の警告を無視して、暴走を始めた。彼は、SISやMI6の人材リクルート人脈をつうじて、傭兵を雇ってイアンを奪回しようと画策した。
  南アフリカ出身のブリテン陸軍特殊空挺部隊(SAS)の出身者2人を雇って、イアンの隠れ家を襲撃させたのだ。襲撃者たちは、シドニー警察の警護役1人とイアンの妻、ピッパを殺害した。その混乱を突いて、イアンは森のなかに逃げ出すことができた。
  だが、襲撃者の1人はシドニー警察のニールによって射殺され、まもなくその男の身元も判明した。ブリテンのSASまたは情報機関の人間のほかには、不可能なリクルート経路が使われていることも判明した。
  チャールズの策謀は、やがて発覚した。

  だが、殺されたピッパは、ジューリー・ヘイルズ警部から説得されて、イアンからMI6の核兵器奪還の秘密作戦を聞き出し、ヘイルズに伝えていた。
  ここで、事件は麻薬密輸事件から核兵器の奪還という安全保障問題へと一気に転換してしまった。とはいえ、秘密のヴェイルが幾重にもかけられた作戦なので、警察側としては作戦についての信憑性について、曖昧さが消えなかった。

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