のだめカンタービレ 目次
題名について
あらすじ
殺伐さのなかの癒し
外れっぱなしの出だし
千秋真一、そしてトラウマ
千秋とのだめ
のだめ、そして謎
最大の謎は音楽的能力
のだめのメンタリティ
西洋音楽と楽譜
千秋の方法論
千秋とSオケ
若者たちの成長
のだめの成長
でも、やっぱりのだめ
のだめカンタービレ 別の記事
物語や人物設定などの考察
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オーケストラ!

千秋の方法論

  楽譜と演奏について、千秋は正統派的な方法論を持っています。
  作曲家の意図をまず尊重すること。そして、理解力や技術が高まったら、演奏者の理解を付け加えていくというものです。つまり、楽曲の設計図・仕様書としての楽譜が指し示す基本方向を何よりもまず尊重せよ、というわけです。
  のだめみたいに、基本ができていない者に対しては、何よりも楽譜から作曲家の意図を読み取り理解しろ!、ということになります。基礎を徹底的に学べ、というわけです。作曲家=設計者は何を言おうとしているのか。

  のだめの好みや直感とは正反対です。ただし、のだめ自身は自分の好みや感性のありようについて無自覚で、客観化できないのですが。
  千秋は言います。楽譜から作曲家の発想や思想を読み取れ、と。
  のだめと出会った頃、千秋は譜面どおりに演奏すること、楽譜から作曲家自身の思想やイメイジを読み取ることがなにより大事だと考えていました。

  とはいえ、この場合、その作曲家自身の構想やイメイジとは、千秋がそうである(あるべき)と想定する作曲家のそれにほかなりません。もとより、彼は時代背景や作曲家の思想や方法論を学び、できるだけ客観的にイメイジしようとしているのですが。

  ところが、のだめは曲を聴いてただちにピアノの奏法を把握してしまうのです。ところが、曲のオリジナリティについては考えることもせずに、まったく自分流に「理解」してしまうのでした。
  アレインジしてしまうのです。勝手にテンポを変えたり、音を加えたり、強弱を変えたり、と。
  だから、千秋は怒る。「勝手に作曲するな。楽譜どおりに演奏しろ」と憤慨します。

千秋とSオケ

  そこに変人=奇人の指揮者フランツ・シュトレーゼマンが現れます(のだめにとっては、ミルヒ・ホルシュタイン)。
  のだめや千秋とシュトレーゼマンは偶然の「ひょんな出会い」をしてしまいます。ところが、じつは桃ヶ丘音大の理事長から要請されて、指揮科の客員講師、兼大学の選抜エリートオーケストラ「Aオケ」の指揮者として来日したようです。

  理事長の招聘の裏の理由は、海外に出られず埋もれてしまいそうな天才、千秋真一の面倒を見てもらいたいというものです。
  理事長は、千秋のほかにも、エリート街道からははずれてしまう「埋もれた才能」を発掘し世に送り出すステップボードづくりの一環として、シュトレーゼマンに活躍してほしいようです。

  この奇人指揮者は、学内の「埒外者」「変わり者」=「落ちこぼれ」たちを集めてSオケを組織することになります。
  彼らは、一風変わった個性を持ち、独特の感性で楽器を演奏する連中です。自分の弱点や短所を直すよりも、自分が好きな(得意な・特異な)分野に突出したがる若者たちなのです。

  シュトレーゼマンの計画と偶然の結果、千秋はシュトレーゼマンの弟子となりSオケの副指揮者になり、さらにシュトレーゼマンが中途でSオケを投げ出したために、正指揮者になってしまいました。
  そこには、シュトレーゼマンなりの千秋育成・刺激計画があるらしいのですが…。

  そんなわけで、「楽譜と正面から向き合って作者の意図や構想を読み取り、演奏によって表現する」という千秋の考え方とは正反対の「落ちこぼれ・変人集団」Sオケの指揮を、彼は引き受けることになってしまいました。

  ところで、学部の学生( undergraduate )のうちにオーケストラの指揮を経験できるのは、このドラマによれば、きわめて希で幸運なことらしいことがわかります。
  とはいうものの、とにかく千秋は彼の理想とするオケ演奏とはおよそ正反対の、技術的には未熟な集団を育てまとめあげるために、苦悩し続けることになりました。
  千秋は、基礎ができていない団員たちに「原理原則」を守れと厳しく要求します。
  ところが、団員たちは、千秋の要求は正当だと認めながらも、その厳しさに萎縮し辟易、反発するのです。
  ぶつかり合いながら、それでも、彼らは確実に成長していく。

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