天使にラブソングを 目次
「聖」と「俗」との出会い
情夫の殺人を目撃!
アバズレが聖女になる!?
デロリス、注目を浴びる
聖歌に調和と美しさを!
尼僧、世俗の悪徳と闘う
教皇も聖歌隊を絶賛
おススメの記事
デニーロ出演歴史劇
ミッション
1900年

デロリス、注目を浴びる

  ところが、テレヴィもなければラディオもないし、音楽プレイヤーもない、禁欲的で刺激のない生活に閉口して、さっそくデロリスは夜中に尼僧院――中心街ダウンタウンにある――を抜け出して、近くのバーに出かけた。
  すると、デロリスに強い関心を抱いている――興味深々にデロリスに注目していた――尼僧2人があとをつけた。こうして、世俗臭ぷんぷんの酒場に尼僧が3人出現することになった。
  ことほどさように、聖なる世界の住人=修道女たちと世俗の垢にまみれた世界との遭遇と対比が描かれていくのだ。

  この椿事は修道院長に発覚して、デロリスは院長から大目玉を食らった。そして修道院長との相談の結果、歌手をしていたデロリスは尼僧たちからなる聖歌隊に加わることになった。
  商業化された音楽の世界ショウビズネスにいたデロリスは、神やキリストを讃える聖歌だけを歌う合唱団に加わることになった。これまた聖と俗との出会いと相互作用だ。
  この聖歌隊、音楽の専門家がいなかったために、隊員メンバーは誰もまともな発声や声楽の訓練をまるで受けたことがない。音域パートの区分も曖昧で、ハーモニーがそっくり抜け落ちていた。地理的には大都市の中心部にあるけれども、文化的・精神的に世間から隔絶された世界にいるので、世間的な音楽の常識もまるきりないのだ。

  しかし、ローマカトリックの世界では、音楽は神学や数論と同様、響きの調和の摂理を考究することで、神の意思でつくられたこの世界の調和の秩序=摂理を理解する大事な修行であるはずなのだが。

■聖歌隊を仕切る■
  最初の練習で失望したデロリスの顔つきを見たリーダーは、反発してデロリスにリーダー=指揮者の役割を押しつけた。
  デロリスは、リノでは女生トリオのリーダーで、曲の選定と編曲を担当し、3つの声部へのパート分けとハーモニーを巧みにアレインジする役割を果たしていた。つまり音楽センスは抜群だった。しかも、生き残り競争激しいエンターテインメントで観客を引きつけるための編曲や演出、表現の技法を身につけていた。
  というわけで、尼僧聖歌隊の旧態依然の練習法を全面的に改めて、音域パートごとの練習、ハーモニーの取り方を訓練し、表現力や活気の大切さを教え込んでいった。
  ここでは、「旧態なるもの」と「新たなるもの」との出会いと論争、対話がおこなわれる。つまり、この作品は、対立する2つの存在のコントラストの妙味が、物語の狂言回しになっているのだ。
  2つの存在、2つの世界は出会い、衝突し、論争対話し、融合していくことになる。つまりこの物語の仕組みは、ソナタの形式であり、交響曲の論理構造になっているだ。

前のページへ || 次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界