原題 : Novecento(1976年)
イタリア語で「1900年代」とか「20世紀」という意味になります。ノーヴァチェントを「1900」と見るとすると、それは西暦紀元年代を意味します。つまりは、1900年代ということになり、つまり20世紀という意味です。
そうすると、厳密には1901年からの時代ということです。
したがって、今頃になって「あと出しじゃんけん」のようですが、邦訳の題名には、少し問題があるようです。
とういうのも、映画の物語は1901年のベルディの死去から始まるからです。
イタリア、エミーリャ地方のポー河隆起の農村を舞台に、イタリアの20世紀の歴史を描いた物語です。
見どころとテーマ:
これは長時間の映画で、およそ6時間近い長さになります。
エミーリャ地方のポー河隆起の農村を舞台に、イタリアの20世紀の歴史の流れを「定点観測」で描いているといえます。それだけの厚みのある歴史の流れが描かれています。
ルネサンスを先導し近代ヨーロッパの先駆けとなったイタリアでは、域内の各地の分裂と対立が長引き国家的な統合が遅れました。そのため、域内は西ヨーロッパの列強によって勢力争いの場とされ苦しみ続けました。
しかし、形の上で国民国家がようやくでき上がった途端に、国内ではファシズムの嵐が吹き荒れます。その後、ナチスドイツと同盟して世界戦争に突入。波乱に富んだ20世紀でした。
私たちは、映画の物語を追いながら、20世紀のイタリアの歴史の1断面を考察することになります。
映画の冒頭は、ジゥゼッペ・ピレッツァ・ダ・ヴェルポード作の「第4身分」(1902年作、題名は労働者階級という意味か)という絵画(静止画面)です。
それは労働者の群集が行進する光景を描いたものです。この絵は、この作品が農業労働者の階級闘争を描こうとしていることを明示しています。
北イタリアエミーリャ地方、ポー河の流域にある美しい田園風景を背景に、この地方の20世紀の歴史が描かれる。
地主の御曹司アルフレードと貧しい小作農民オルモとの奇妙な友情を横糸にしながら、この地方で起きる事件の流れを縦糸として織り込んだ壮大な歴史叙事詩が展開する。
地主と農民との階級闘争、ファシズムの席巻と狂気、反ファシズム解放闘争という歴史的な「できごと」が次々にが描かれていく。
1920年代、地主=農場主階級は、農民の抵抗や反逆を抑え込むためにファシスト運動を利用する。ファシスト党はローマに行軍して政権を掌握する。
やがて、この地方でも、世界不況の嵐のなかで深刻化する農村の混乱の間隙を突いて、ファシストが幅を利かせ、農場支配人のアッティラが権力を握る。
農場でのアッティラ率いるファシストの暴力はますますひどくなる。これに抗議しアッティラを打ちのめしたオルモは、報復を恐れて農場を逃げ出した。
それから数年、ローマのファシスト政権は倒れ、エミーリャ地方にもパルティザンや左翼による解放運動がおよぶことになった。
解放後、アルフレードは臨時の民衆裁判で裁かれ、非難を浴びる。そこにオルモが帰還し、2人の奇妙な友情が復活する。
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