こうした虚偽報道・情報誘導によって賛美称揚されたペンタゴンの最新兵器開発戦略の行く手にあるのが、無人・自動のロボット兵器やコンピュータ自動制御型の索敵・殺戮兵器である。たとえば大型ドゥロウンにバルカン砲やミサイルを搭載した航空兵器やキャタピラつきのロボット兵器など。映画のなかで描かれたスカイネットのディヴァイスと見まがうばかりのものだ。
それらは、これまでも、これからも巨額の国家財政資金を注ぎ込んで研究開発され、洗練されているのだ。
さて、「ターミネイター」シリーズでは、各編ごとにスカイネットによって未来から現在に送り込まれるターミネイターの型が進化し、ターミネイターが狙う対象も変わっていく。ターミネイターとは、殺戮ロボット兵器で、高度な人工知能を搭載したヒト型マシーン(アンドロイド)だ。
このシリーズでは、時間の流れというか歴史は、過去から現在、そして未来へという一方向の時系変化ではなくて、現在と過去とが相互に影響し合い変形し合う双方向の関係にある。
現在と未来とは相互作用で変わり合う。だが、いずれにせよ、未来の世界では自動機械=兵器が地上を支配し、生き残って抵抗している人類を追いつめ滅ぼそうとしている。人類の抵抗はしぶとく、機械側は――過去の歴史を変えてしまうことで――人類側の抵抗軍の指導者ジョン・コナーをこの世から消してしまおうと企んだ。
シリーズ第1編では、ターミネイターの初期型が若いサラー・コナーを抹殺しに送り込まれる。サラがジョンを生む前に始末しようというのだ。
第2編では、未来から送り込まれたターミネイター1000型が少年ジョン・コナーを狙い、一方で、ターミネイターT−100型はジョンをひたすら防御することになる。T−100型は未来の人類がジョンを守るために過去に送られたもの。
第3編では、ケイト・ブリュウスターを狙ってT‐Xが送り込まれる。ケイトはやがてジョン・コナーの妻になり、彼の死後に人類側反乱軍を指揮することになるはずだった。T‐100改良型はここでもジョンとケイトを守る役割を果たす。
こうして、時系的因果連鎖を組み換えるために抹殺兵器アンドロイドが未来から過去に送り込まれ、過去と未来の双方の側で因果連鎖が相互に変化するというタイムパラドクスの物語となる。
未来のスカイネットとしては、人類側反乱軍を指揮する人物を殺して、人類の殲滅戦での阻害要因を取り除こうとするわけだ。
第3編では、結局スカイネットがアメリカの全軍事システムを乗っ取り、全地球的規模で核戦争を展開させ、人類文明を破壊してしまうカタストロフまでが描かれる。