最新型ターミネイターT−Xは、旧型ターミナネイターの反撃を受けて、ケイト(とジョン)を抹殺するという任務に失敗する。だが、他方では、兵器開発のなかで生まれたコンピュータ・ウィルスないしマクロ・プログラムでもあるスカイネット・システムが、ペンタゴンの戦争指揮および兵器管理体系の情報システムを乗っ取って、核戦争で現代文明を破滅させることには成功する。
というよりも、スカイネットによる征服支配は、ペンタゴンが自身が進めていたサイバーテロ対策システムならびに先端兵器研究開発の結果、必然的にもたらされたものなのだ。
つまりは、アメリカの国家装置と軍産複合体自身が自動化されたAI兵器体系の開発を推し進めた結果が、スカイネットの支配を招き、すなわち人類を滅ぼす道になったということになる。
ペンタゴンの全兵器体系をコントロールするコンピュータ・システムを乗っ取ったスカイネットは、一方ではソ連への先制核攻撃を仕かける。他方で、アメリカ軍の先端兵器研究所に侵入したT−Xの操作で起動したターミネイターのプロトタイプ(T−0型)こそが、人類の大規模な抹殺を始めたのだった。
おそらくソ連の軍産複合体にもスカイネット・ウィルスが侵入し、コントロール・システムを支配したのだろう。世界的規模のネットワークをつうじて、スカイネットへの感染が拡大していったはずだ。
第2編までは、未来世界のスカイネットが、スカイネットが支配するコンピュータ・ネットシステムを現代に生み出すために、ターミネイターのコンピュータ記憶素子部品を試料として現代=過去に送り込でいた。それを兵器システム開発会社に手渡して、スカイネットの初期システムを開発させようとしたのだ。
したがって、スカイネットは現代のサイバーダイン社が単独で研究開発して生み出した情報システムではなく、未来から送られたプログラムがスカイネットの開発の鍵となっていた。いわば最重要の原因は未来にあった。
ところが第3編では、ペンタゴン自身が自発的に進めた研究開発――サイバーテロを防ぐはずの研究――の結果としてスカイネットが支配的地位を獲得する。いわば人類の内発的な動きの結果として、自らの破滅を呼び寄せるという状況設定になっている。過去と現在がスカイネットの支配という未来を生み出したのだ。
この状況設定は、見方によっては、ニヒリズムというかシニシズムの極限ともいえる。人類は、それほどに愚かであるという悲観論がこの物語を導いたのだ。