さて、ブックはレイチェルに強く惹かれながらも、その少し前から車を修理して、外の世界に復帰する準備を整えていました。
観光客とのいさかいをきっかけに、ついに彼は、村を出る決心をしました。その決意の表れは、鳥の巣箱の修復です。
この巣箱は、小さな住宅の形をしたもので、支柱の上に設えられていました。ブックが重傷を負って逃げてきたときに、失神して車をぶつけて壊してしまったものです。
前にあったとおりに復元する。ブックは村を出るにあたって、そんなふうに考えたものでしょうか。
そして、サミュエルへの贈り物として手の込んだ木工の玩具をつくりました。
そんなブックの行動に、レイチェルは避けられない別れの気配を感じます。彼女が夕闇が迫る窓の外を眺めると、ブックはエリとともに作業をしています。
ブックはエリに手伝ってもらって、修復した巣箱をもとの場所に取り付けていたのです。
作業を終えて家のなかに戻ったエリは、レイチェルに、ブックは明朝村を出るつもりなのだと告げます。
思い余ってレイチェルは戸外に飛び出して、ブックに駆け寄りました。2人はぶつかるように抱擁し合い、口づけを交わしました。わずかの間のたった一度の抱擁、それが訣別の挨拶だったようです。
最近の映画にはない、抑えた表現ながら、繊細で風雅な心情描写です。監督は、こういう抑えた邂逅と離別を描きたかったようです。
ところが翌朝、村に通じる道に1台の車がやってきます。
シェイファーとマクフィー、ファージーの3人がやって来たのです。彼らは車のトランクからショットガンを取り出して手に取ると、エリの家に向かいました。
3人は朝の支度をしていたレイチェルを捕まえ、さらにエリに襲いかかりました。エリは叫んでブックに危難を知らせました。
納屋にいたブックは、サミュエルを物陰に隠し、自らも身を潜めました。
一方、ファージーは納屋にブックらしい人の気配を感じて、探り始めました。
彼が納屋の穀物サイロの真下に来るや、ブックはサイロの蓋をいっぱいに押し開けます。すると、巨大な穀物の塊がファージーを襲い生き埋めにしました。落下する穀物の衝撃で、ファージーは頚椎を折られて彼は死亡したようです。
今度は、大きな物音に気づいたマクフィーが納屋に忍び寄りました。
ブックは、穀物を掻き分けてファージーがもっていたショットガンを奪うと、納屋に忍び込んだマクフィーに散弾を浴びせました。
これで、襲撃者のうち2人が倒され、残りはシェイファーだけになりました。
そのとき、物陰から出てきたサミュエルは、村人に危難を知らせ呼び寄せるため、(非常用の?)鐘を鳴らし始めます。よく知恵の回る子です。
さて、シェイファーはレイチェルの背にショットガンを突きつけて、ブックに銃を捨てて出てくるように迫りました。ブックは仕方なく丸腰で出て行きました。
ところが、鐘の音を聞きつけて、ホッホライトナーをはじめとする近隣の住民がエリの家の周りに集まってきます。彼らは、ブックとレイチェル、シェイファーを取り囲むように事態を見守ります。
衆人環視のなかですから、シェイファーは警察署長の権威を振りかざして、ブックが殺人事件の容疑者だとしてブックを捕らえようとします。
けれども、村人の前でブックはシェイファーらの犯罪を暴きたてます。そして、事実を知った村人もブックとともに殺すのか、殺せるのかと迫ります。
村人たちは平静で無言なのだが、シェイファーに対して鋭く問いかけるようなの視線を浴びせ続けます。すくんだ銃を捨ててくず折れてしまいます。
銃=暴力装置による威圧は、非暴力に徹するアーミッシュの無言のまなざしの前に屈することになりました。
立場は逆転して、ブックが署長を逮捕する立場となりました。やがて、警察が呼ばれ、シェイファーを拘引していきました。
現場での捜査員による事情聴取ののち、シェイファーらの犯罪が暴かれ、ブックはフィラデルフィア市警に復帰できることになりました。