大変な騒動が起きた祝祭行列だった。だが、とにかく事態は収拾され、祝祭も終わったように見える。凶悪脱獄囚のボビーが射殺されたことで、脱獄囚の捜索は終わったように見える。
さて、あるいは翌日の朝のことだろうか。
ネッドとジムは何の制約もなく国境を超えてカナダに行けるようになった。だが、ジムはこのままこの修道院にとどまりたいと思うようになった。ここなら警官に追われることもないし、何よりも心の平穏を得ることができる。世俗を離れて修行と思索に明け暮れる生活に、ジムは向いているらしい。修道院から離れがたいようだ。
ネッドは出立をためらっているジムを促して、修道院を出発した。そのとき、ジム(ブラウン神父)を深く尊敬する、あの若い修道僧がやって来て、名残りを惜しんだ。ジムにここにとどまってもらえないかと望んだ。
だが、ネッドが無理やりジムを引き立てた。
後ろ髪を引かれるように修道院から去るネッド。
2人は橋を渡り始めた。そこにモリーが娘の手を引いて現れた。そして、ネッドの傍らをいっしょに歩き始めた。
ネッドに娘の救出のお礼を言うためだ。
ネッドは謙虚に、けれどもちょっぴりつっけんどんに答えた。
「いや、どうということはない。お礼を言われるほどのことでもないさ」
モリーは、ネッドの献身的な姿にすっかり感動したのだ。何よりも、娘が話せるようになったことに深く感謝していた。河に飛び込んで救出したことがきっかけとなって、娘の障害が奇跡的に直ったからだ。
で、尋ねた。
「娘が話せるようになったのは、奇蹟を起こしたの?」
「そんなことはない。その話は、もう、よしてくれ」とネッド。
そして、これまでの生活苦をこぼすモリーに、「元気を出しなさいよ。これからはきっといいこともあるさ」と励ました。モリーは素直にうなずいている。
会話しながら歩くモリー母子とネッド。だが、ジムは橋の中ほどで足を止めて、向こう岸の修道院を振り返っている。やはり、修道僧の生活が恋しいらしい。
ジムは振り返ってネッドを見た。そして、修道院の方を指差して、「やはり、ぼくはあっちに戻るよ」という仕草。
ネッドはジムを見つめ、モリーを見つめ、ふたたびジムの顔を見ると頷いた。
「ああ、行っていいよ。ここでお別れだ。それぞれの道を行こう」
ジムは少年のように無邪気に顔を輝かせて、早足で戻っていった。そして駆け出した。
モリーとネッドは、橋をほとんど渡り終わってダムの上の道に差しかかった。ネッドはモリーに腕を差し出した。もりーはその腕を取って組んだ。なかなかいい雰囲気だ。
しばしのランデヴーか、それとも今後ともに人生を歩むのか。いずれにせよ、希望を感じさせる場面。
ネッドが振り返ると、ジムが若い修道僧と手を取り合って喜んでいる。そして、ネッドに手を振った。それを見て頷いたネッドは、モリーの腕を取ってカナダの地に歩き出した。