《討ち入り市兵衛》は、時代劇テレヴィドラマ「鬼平犯科帳」シリーズ4として制作された作品。
このサイトでは、「鬼平犯科帳」シリーズのなかでも好きな作品を折にふれて取り上げる予定です。今回はその第1回目です。
このシリーズは池波正太郎の作品を原作として、脚本と時代考証、背景描写や道具設定が大変丁寧で、上質の作品がたくさんあります。
日本のテレヴィドラマのなかで、物語の時代の街並みや風景、小道具などをできる限りリアルに設定しようとする方法を取った最初の作品群と評価しても間違いないでしょう。
原作 : 池波正太郎 『鬼平犯科帳』「討ち入り市兵衛」(文春文庫)
見どころ:
池波正太郎の作品世界を巧みに表現する作品で、物語がすばらしいだけでなく、主演の中村吉右衛門(長谷川平蔵)と中村又五郎(市兵衛)との取り合わせがいい。
歌舞伎役者、中村吉衛門と中村又五郎の上品で研ぎ澄まされた演技が冴えています。
今では鬼籍に入った職人気質の役者たちが、みごとな演技を繰り広げています。
大金持ちしか狙わず、根こそぎは奪わず。殺傷、強姦、暴力を拒否して、巧妙で鮮やかな盗みの「芸の道」を歩んできた蓮沼の市兵衛。
被害者の商家も、彼ら一味の侵入や窃盗にまったく気づかなかったという。その「つとめぶり」は盗みの世界で伝説となっていた。
いまでは隠居の身で、かつての参謀・側近たちと江戸の町なかで静かに暮らしていた。
ところが、悪辣な強盗一味が市兵衛に提携を申し込んできた。殺傷などは当たり前という、力づくの押し込み強盗専門の一味だった。
市兵衛は、一味の申し込みを拒否した。すると、一味のもとに断りの返事を伝えに出向いた腹心の手下を彼らに殺されてしまった。市兵衛は復讐を誓った。だが、昔の手下たちのほとんどは「仇討ち」に協力しようとしなかった。
討ち入りの人数は5人ほどだった。市兵衛は、相模の彦十に仇討の助っ人紹介を頼んだ。彦十は、平蔵の若い頃からの知り合いで、火付盗賊改方の密偵を務めている。
ところである日、市兵衛は、非道な武士の乱暴狼藉を軽々と撃退した、浪人姿の長谷川平蔵と出会い、意気投合して料理屋で一献傾けることになった。
ひょんなことから平蔵は、市兵衛の助っ人を買って出て、仇討ちに手を貸すことになった。
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