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巡礼旅の道連れ

  といようなわけで、トーマスは巡礼旅を始めたのですが、心のなかはアンビヴァレントです。一方では、死んだ息子がこの巡礼旅何をめざしたのか知りたいのですが、他方では、苦難続きの田舎道歩き続けることにバカらしさをも感じているのです。
  ともあれ、社交的なホラント(オランダ)人となんとなく道連れになった形です。この道連れについても、トーマスは一方で話し相手がいて心強いようで、しかも他方で煩わしいようなアンビヴァレントな気分です。

  道連れといえば、長い遍路旅では、人間は孤独を感じるせいか、あるいは開放的な気分になるせいか、道柄で出会った人びとと仲良くなったり、心を通わせたりするようになるようです。
  ひとりになって息子のことを考えたいという気持ちを抱くトーマスは、ヨーストのほかにも道連れができました。「禁煙する(喫煙依存症から抜け出す)ためにサンティアーゴまで歴程するの」と語るカナダ人女性、サラとも出会いました。じつは彼女は、禁煙もひとつの目的なのですが、家庭内暴力というか乱暴に接する夫から逃避したくて、巡礼旅に来たのです。


  さらに旅行記作家トラヴェルライターのアイアランド人、ジャックも何となく道連れに加わりました。ジャックは若い頃にウィリアム・イェイツやジェイムズ・ジョイスのような偉大な文芸家になりたいと思ってフリーライターになったのですが、いまだに世の耳目を集めるような作品(小説)を書いていません。しかも、今は物書きとしてのひどいスランプに陥っているとか。
  そんなふうにして、トーマスたちは4人連れのグループを形づくることになりました。

  この4人組が偶然出会って自然発生的にグループをつくったように、長い歴程道中では数多くの道連れグループに出会うことになります。そして、そんなグループが合体して大きな集団になったり離合集散して、気の合う別のグループに再編されたりすることもあるようです。
  とはいえ、より長い共通の時間や体験をもつことは、それだけより深い親近感や信頼関係をもたらすようで、最初にできた道連れ仲間が長く続いて目的にまで到達することが多いとも言われています。

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