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異国で見た息子の幻影

  さて、トーマスたち一行は、エスパーニャに入って間もなく、別の巡礼者グループと出会います。2人のフランス人とイタリア人、そして合衆国ニュウヨークからやって来た老神父です。エスパーニャ自体が、キリスト教ヨーロッパだけでなくイスラムなど多様な人種・民族・文化が交じり合ってきた国柄ですが、今では巡礼遍路に世界中から多様な民族・言語・文化を背負った人びとが訪れて、新たな形での交流と混交がもたらされるようになっています。

  異国でのそういう出会いの中で、トーマスは息子ダニエルの幻影を見ることになりました。
  「人は自分の人生を能動的に選んでいるのではないんだ。社会や世界の仕組みのなかで、人生を選ばされ流されているにすぎないんだ。人は自ら自由な生き方を選ぶことはできない。
  ぼくは、この世界のいといろなところを見て回って、さまざまな人びとと出会い、彼らの生きざまを見出し、学ばなければならないんだ」
  そんな言葉を残して、異国に旅立ったダニエル。トーマスは、巡礼道に沿ってエスパーニャの各地を巡り歩いているダニエルの姿を幻視したのです。それは、異国の地に来て辺鄙な田舎道を歩き続けているうちに、いく分ダニエルの気持ちが理解できるようになってきたからかもしれません。

  同じ国内に異なる文化や伝統の痕跡が明白に残っているエスパーニャの風景は、人びとが置かれているそれぞれの社会的地位や生活環境の違いが見えやすい社会なのかもしれません。そのため、「人は人生を選べない、生かされているにすぎない」というダニエルの言葉が心に染み入ったようです。


■エスパーニャの社会と歴史風土■
  ところで、国境を越えてエスパーニャに入ると、やはり風景もですが、社会の仕組みや雰囲気もガラッと変わります。とりわけ、1000年以上も前からおよそ5〜6世紀の長期にわたって、イベリア半島のキリスト教徒たちはレコンキスタ Reconquista (領地再征服運動)を展開し、ムスリムとの戦役を続けました。
  レコンキスタはキリスト教徒諸領主の軍によるイスラム教勢力を制圧・駆逐する征服運動であって、つまるところ「異教徒討伐」運動でした。そのため、再征服地の当地では、イスラム教徒はもちろん、それだけでなく、ローマカトリック教会以外のキリスト教諸宗派やユダヤ教徒に対する圧迫や迫害も頻繁におこなわれました。

  こうして、イベリア半島でのキリスト教徒社会の形成ならびに諸王権の統治機構の形成においては、すぐれて排外的・排他的な傾向が強まっていくことになりました。もとより、エスパーニャではイスラムの文化などが入り混じった社会ができ上ったのですが、そこでは、ともすると宗教的ないし民族的な少数派を抑圧・排除しがちな傾向が台頭する素地もまた固まっていったのです。

  エスパーニャは、じつは古くから今まで各地方ごとに強い個性を持ち続けているため、まとまりのない社会をなしています。
  さて、国境を越えてエスパーニャに入ると、やはり風景もですが、社会の仕組みや雰囲気もガラッと変わります。とりわけ、1000年以上も前からおよそ5〜6世紀の長期にわたって、イベリア半島のキリスト教徒たちはレコンキスタ Reconquista (領地再征服運動)を展開し、ムスリムとの戦役を続けました。
  レコンキスタはキリスト教徒諸領主の軍によるイスラム教勢力を制圧・駆逐する征服運動であって、つまるところ「異教徒討伐」運動でした。そのため、再征服地の当地では、イスラム教徒はもちろん、それだけでなく、ローマカトリック教会以外のキリスト教諸宗派やユダヤ教徒に対する圧迫や迫害も頻繁におこなわれました。
  こうして、イベリア半島でのキリスト教徒社会の形成ならびに諸王権の統治機構の形成においては、すぐれて排外的・排他的な傾向が強まっていくことになりました。もとより、エスパーニャではイスラムの文化などが入り混じった社会ができ上ったのですが、そこでは、ともすると宗教的ないし民族的な少数派を抑圧・排除しがちな傾向が台頭する素地もまた固まっていったのです。

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