演技方法と物語性 目次
映画は国際政治をどこまで描けるか
映像社会学の試み
地政学とは何か
映像物語の地政学的考察
■アラビアのロレンス
  3C政策と3B政策
  アラブの盟主・・・
  約束手形の乱発
■アメリカ軍産複合体とクーデタ
  US軍産複合体の焦燥
  海洋権力と通信網
  ヘゲモニーの重い代償

3C政策と3B政策

  ところで、第2次世界戦争の初期における地中海東部から中東、北アフリカ、インド洋方面をめぐるブリテン帝国とドイツ帝国との対抗関係は、ブリテンの「3C政策」とドイツの「3B政策」との対抗として現れた。
  こうして、両陣営で、それぞれの戦略拠点ネットワーク構築をめぐる角逐と駆け引きが展開された。
  もっとも、ブリテン側の「3C」がすでに確保され構築されている戦略拠点であるのに対して、ドイツ側の「3B」か戦略目標であって、半ば願望=展望ともいうべき計画だった。

  ブリテンはC頭文字の重要な戦略拠点3つを結ぶ構想を描き、ドイツはB頭文字の重戦略拠点3つを結ぼうと構想していた。
  ブリテン側の3Cとは、カイロ−カルカッタ−ケイプタウンを結んだ三角形の構想であって、

●ブリテンの地中海ならびにインド洋(すなわちアフリカと中東、南アジア)におけるブリテンの通商および軍事上の最優位――言い換えればインド洋貿易とアジアの植民地帝国支配――を確保しながら、

●地中海東部=中東、アラビア、ペルシア湾=インド洋へのドイツの進出経路を阻止する戦線を構築する

という戦略だった。
  他方でドイツ側の3Bとは、ベルリン−ビザンティウム(コンスタンティノープル)−バグダードを結んだラインであって、

●バルカン半島から黒海沿岸、アナトリアを経てバグダード、つまり原油産地のペルシア湾にいたるドイツの進出経路の確保をめざす

という戦略だった。そのさい、このラインを最終的に高速鉄道で結んで、兵站=補給線と軍事進出経路を構築しようとするものだった。
  ドイツは、帝国各地での反乱や放棄が続発するトゥルコのレジームを補完・補強しながら、自らの権益と影響力を浸透させようとしていた。したがって、鉄道施設の破壊は、トゥルコの統治レジームの破壊となるだけでなくドイツの戦略への直接的な打撃となるはずだった。

  ドイツとトゥルコの同盟は、ドイツ側からすれば、事実上解体し始めているトゥルコ帝国をドイツの軍事力と産業=通商が支える、つまりはバルカン半島と黒海・アナトリア方面、メソポタミアにドイツの地域覇権をおよぼそうという目論見によるものだった。
  そうなると、ブリテン側としては、権威がすっかり衰退して外皮と骸骨ばかりのようになったトゥルコ帝国を解体・分割して、原油産地や貿易航路(とその軍事的防衛)の要衝をブリテンの支配下――植民地帝国――に併合して、ドイツに対する戦線を構築しようということになる。
  その場合、トルコ帝国の支配下に呻吟しているアラブ人たちが、メソポタミアからペルシア湾、アラビア半島方面で反乱を起こして、トゥルコの支配権を衰退・崩壊に追い込むような事態が生じれば、きわめて好都合である。
  アラビア・メソポタミア方面でトゥルコ帝国の地域覇権が崩壊すれば、軍事的・通商的な力の優越に任せて、ブリテンはやりたい放題に領土の切り取り、分割・併合をおこなうことができるというわけだ。

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