消えたフェルメールを探して 目次
盗まれた絵画を追って
見どころ
発端 絵画強奪事件
フェルメールの幻の名画
イザベラ・ステュアートと美術館
美術品探偵ハロルド・スミス
FBIが調べた関係者
ボストン・ヘラルドの事件記者
メディアの活用
ある美術史家の推理
「警備員の犯行」説
ヤングワースの申し出
ある絵画泥棒の提案
アイリッシュ・コネクション

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盗まれた絵画を追って

  美術品泥棒を物語に登場させる映画作品は多いようだが、主要なテーマとして描いた作品は少ないようだ。絵画の贋作詐欺の物語については、取り上げたことがあるが、今回は「絵画泥棒」という業界の世界を垣間見ることができる作品を扱うことにする。

  ここで取り上げるのは『消えたフェルメールを探して――絵画探偵ハロルド・スミス』という作品。もともとは2004年制作・放送のアメリカのテレビ・ドキュメンタリー・プログラムで、実在の絵画盗難事件を追跡する美術品専門の探偵の捜査を記録した映像物語だが、翌年に映画プログラムとして編集され公開された。

  原題は Stolen 。英語の「盗む」 steal という動詞の過去分詞あるいはこの過去分詞から転用した形容詞で「盗まれた」という意味。
  冠詞がつけられていないので、意味は何通りにも解釈できる。主な意味としては2通りになる。
  もともと定冠詞 the がないのだとすれば、文法上は分詞構文で「何かが盗み出されてその後」「盗難に遭ってからの経緯」というような意味合いになる。この場合には、盗難事件に遭遇した美術館の対策とか盗難事件の捜査が主題となる。
  だが、定冠詞が省略されているのならば、「盗まれたもの」「盗み出された絵画」というような意味合いになる。この場合には、盗み出された絵画そのものについての話題、あるいはその絵画をめぐる過去からの経緯とか、その行方が主題となる。
  見方としては両方とも成り立つが、作品を見る限り前者の方の意味合いが強いように感じる。

見どころ
  『消えたフェルメールを探して――絵画探偵ハロルド・スミス』《ストールン》は、ロンドンのロイズなど世界の大手保険会社から美術品盗難事件にかんする調査を委嘱されている美術品探偵、ハロルド・スミスのある絵画盗難事件の捜査に関するTVドキュメンタリー・プログラムである。
  事件とは、1990年3月に起きた、ボストンのイザベラ・ステュアート・ガードナー美術館からの絵画強奪事件。このとき、計13点もの高価な有名な絵画が盗まれた。そして、いまだに――映画公開時点で――未解決で絵画は奪回されていないだという。
  ハロルドは、この事件の調査=捜査を依頼されて、アメリカ中はもとより、世界中を駆けめぐって調査を進めたが、絵画の行方に関する手がかりは得られなかったという。

  このドキュメンタリーフィルムの物語を観ることで私たちは、世界的規模で美術館や蒐集家による美術品の獲得競争がどのように繰り広げられてきたか、そして美術品泥棒の世界がどのようなものなのかを垣間見ることができるだろう。

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