デイ・アフター・トモロー 目次
気候変動の果てに
原題とあらすじ
見どころ
急激な温暖化
スーパーストーム
大嵐は大寒冷化の前兆
壊れゆく現代文明
襲い来る大寒波、…
バルモーラルの悲劇
氷雪に埋もれたニュウヨーク
合衆国、そして現代文明の滅亡
サヴァイヴァルの旅
文明構造の転換
温暖化の主要原因は何か
核心的論題
熱交換システムとしての地球…
熱交換で地表を冷やす
気候変動と人類文明
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評  決

急激な温暖化

  物語は、南極大陸の大氷床から始まる。
  大陸の中央部に近い、アメリカ合衆国の観測隊ティームの宿営地でのこと。
  3人の科学者が氷床のボーリングをしている。南極大陸の氷床に保存されている過去の気候変動の痕跡を分析するサンプリングのためだ。
  ところが、彼らのいる地点の真下の氷床に巨大なヒビが入り始めた。そして、見る間に巨大なクレヴァスが出現した。3人はかろうじて落下を免れた。
  それは、温暖化の影響だった。南極大陸の中央部に近い地点で、数千メートルの厚さを誇る棚氷が崩壊し始めたということだ。そこまで気候変動は深刻になっているのだ。

■ある科学者の仮設■
  それからまもなく、インドのニューデリーで国連が主催する「地球の気候変動」に関する国際会議が開催された。そこには、先頃、南極でかろうじてクレヴァスへの転落を免れたアメリカの古気象学者ジャック・ホールも参加していた。
  彼はこの会議で、身をもって体験した気候変動の危険な兆候が行きつく将来について仮説を説明した。
  温暖化はやがて大海洋の深層潮流の構造を転換して、深層から寒冷な海水を表層に押し上げるとともに、極地の急激な寒冷化を呼び起こし、さらに海流の運動を組み換え、寒冷化した極地の大気と海水を世界中に運搬するだろう。こうして、温暖化の結果として、急速な寒冷化が北半球全体に襲いかかることになるだろう、という予測を発表したのだ。


  仮説の説明が終わると、会場から質問が出された。
  「その寒冷化に向かう変動はいつ頃から始まる見通しですか」
  「わかりません。200年後か、もっと先になるか。それとも、もうすでに始まっているのか……。いずれせよ、明白な寒冷化の兆候が顕在化するのは、ずっと先です。
  しかし、そのリスクを回避するために、今すぐに人類は現在の産業の仕組みを組み換えなければなりません。化石燃料の使用量を大幅に縮減しなければ…」
  アメリカ副大統領は、不快そうな顔つきでジャックの提言に反論した。
  「今、ただでさえ、世界の国々は景気の低迷に悩んでいるんだ。それなのに、気候変動を怖れて、産業活動を抑制しろというのかね」
  副大統領の発言は、ジャックの仮設の信憑性を疑っていることによるものなのか、それとも、化石燃料の大量消費を継続しようとする経済界=産業界の利害を代弁することによるものなのか。
  いずれにせよ、合衆国政府は、化石燃料の大量消費によってエネルギーを生み出すことで成り立っている現代産業文明を組み換える考えのないことを声高に表明したものだった。

  ところが、ジャックの仮説を高く評価した科学者がいた。
  スコットランドのヘドランド気候調査研究所の教授、テリー・ラプスンだ。彼は、ジャックの仮設の根拠を提示していた。温暖化の結果、極地の氷が融解すると、海水の塩分濃度の激変によって表層海流と深層海流の構造が転換して、逆に寒冷化を引き起こすのではないかと考えていた。
  というわけで、温暖化が海洋の海流の運動の仕組みを転換し、寒冷化を引き起こしかねないという懸念を共有する2人の科学者は、意気投合して、今後、情報交換や理論仮説の共同検証で提携していくことになった。

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