セルビアックが語った物語は、ボブとドニーがアフリカで見殺しにされる以前から始まっていた陰謀に関するものだった。
冒頭の映像で描かれた、エティオピア高原を流れる河に沿って建設されたパイプライン。それは、アメリカの多国籍石油企業が敷設したものだった。だが、上流のいくつかの村の住民たちはパイプライン建設のために集落ごと移住する計画に反対していた。
そこで、大手石油企業は、ミーチャム議員を代表とする政派をつうじて、ペンタゴンの退役将兵たちがつくった軍事顧問会社にトラブルシューティングを依頼した。会社の傭兵隊はPKO担当のアメリカ軍に扮装してエティオピア領内深くに入り込み、1つの集落を襲撃して住民を皆殺しにした。そして、パイプラインの敷設予定地の地中に村民たちの死体をまとめて地面に埋め込んでしまった。
凄惨なジェノサイド事件はは、近隣の村落にも伝わり、やがて一帯から住民は立ち退いたという。
ボブとドニーがPKO部隊と信じ込まされて援護したのは、この作戦から帰還する傭兵隊だった。
ところが、先頃、フィラデルフィアを遊説に訪れていた大統領が、この虐殺事件を調査しているエティオピアの大司教と会談する予定になったことから、アメリカの石油企業と軍事顧問会社(ペンタゴンの幹部とも癒着)の恐ろしい犯罪を告発されることを恐れて、暗殺することにしたのだという。
暗殺の標的は、大統領ではなく、大司教だったのだ。大統領は、市民やメディアの目を逸らすためのダミーでしかなかった。軍部は、その利権のためには大統領さえ「案山子」にするというわけだ。
まあ、実際には、洗練された石油多国籍資本が、こんな粗雑な陰謀を企図するはずはないと思うが。要するに、映像の主人公は狙撃シーンを中心とするヴァイオレンスだ。緻密な物語を期待する方が無理と言うもの。
さて、ボブとニックは、リンチバーグのロッジの周囲で展開された戦闘から生還した。この凄まじい戦闘シーンはなかなかの「見もの」だが、ここでは語らない。映像を見てもらうしかない。
ところが、この間にサラとボブとのつながりが、ジョンスン一味に捕捉されてしまい、彼女は一味に捕らえられてしまった。
ジョンスン大佐とミーチャム議員は、サラを人質にしたものの、エティオピアの虐殺事件の真相をボブとニックに知られてしまった。真相を語るセルビアックの声を録音されてしまったのだ。
それだけでは状況証拠の1つにすぎないが、それをきっかけに調査が始まれば、パイプライン施設の下に埋められた多数の住民の死体も発見されるだろうから、ペンタゴンの権威が崩壊するかもしれない。「綻びの糸目」になる決定的な証拠だ。
しかも、ニック(今は立場が最悪だが)は司法省の機関FBIの現役の捜査官だ。
ボブは、ジョンスンとミーチャムに対して、人質とその音声記録(携帯端末機)との交換を申し入れた。物的証拠を引き渡すという交換条件はなかなかに魅力的だった。交渉の結果、モンタナ州にある(ロッキー山脈の)真夏でも雪原がある高山の山頂付近で「交換」をおこなうことになった。
もちろん、軍事顧問会社の一味は、ボブとニック、そして証拠を抹殺するためにこれまた周到な罠を仕かけてくるだろう。