ターミネーター3 目次
現代文明滅亡のシナリオ
「軍産複合体が支配・・・
戦争と兵器開発の実態
兵器開発の行く先にあるものは?
ターミネイター・シリーズの物語
軍産複合体がスカイネットを生み出す
悲劇的な結末へ
おススメのサイト
現代文明滅亡を描く物語
デイ・アフター・トモロー
医療サスペンス
コーマ
評  決
ブ ロ グ
知のさまよいびと
信州の旅と街あるき

現代文明滅亡のシナリオ

  映画作品を、現代史の新たな文脈において勝手に読み直してみると、作品に組み込まれていたいろいろな問題提起が見えてきたりする。もちろん、そういう解読は見る者の勝手な解釈かもしれないが……。しかし、それはひょっとしたら制作陣が作品に埋め込んだ隠し味かもしれない。
  ……というような勝手な問題関心で今回取り上げるのは、映画『ターミネーター3』(2003年)。原題は The Terminator 3 − Rise of the Machine 。「ターミネイター」の意味は「殺戮者」「絶滅作戦の遂行者」。そして「ライズ オヴ マシーン」の意味は「機械兵器の反乱」または「機械が支配する文明の勃興」。

「軍産複合体が支配する文明」の行方

  この作品では、アメリカ合衆国の軍産複合体 military-industry-complex が頂点に立つ現代人類文明が、自ら生み出したITテクノロジー=最新兵器体系によって滅ぼされていく過程の最終局面が描かれる。興味深いのは、この作品で登場する最新兵器のある部分は、すでにペンタゴンの肝いりで開発されている自動兵器=ロボットだということだ。
  もとより、ペンタゴンは戦争における「味方の人的損害」を極小化するために、このようなロボット兵器を開発しているのだが……。だから、そういうIT兵器の開発の進み方や実践への投入応用によっては、『ターミネイター』の世界が現実化するおそれがあるのだ。

  2001年9月のアメリカへのテロ攻撃から2001年10月のアフガニスタン戦争、さらに2003年春のアメリカのイラク侵攻、さらにISISの跳梁跋扈、現在のシリア内戦という流れで展開してきた、人類の無謀な破壊行為と憎悪の連鎖反応を眺めるとき、『ターミネイター3』が描いた現代人類文明の滅亡という悲劇的な出来事はあり得ない話ではないと思える。
  少なくとも、この映画がを描こうとした、このような悲劇を呼び起こすかもしれない社会心理的背景を理解できるだろう。

  人類はいまのところ――地球環境とか人類の格差構造を是正を考慮する――理性による自己抑制よりも、目先の利益の追求衝動の方がまさっていて、それは狂気ともいえるほどの憎悪の自己増殖を招きかねない状態だ。ひたすら憎悪に駆られたISISの支離滅裂な行動スタイルを見るとき、現代人類文明はこんな不気味な怪物を生み出してしまったのだ、と戦慄するしかない。
  冷めた言い方をすれば、人類とはそういう生物種であって、地球環境を破壊しながら他の生物種を巻き込みながら自滅に向かうはずのものなのかもしれない。

  この作品では、未来のスカイネットが現代に送り込んだターミネイター T−X の残酷な殺戮行動と並んで、いやそれ以上に、USペンタゴンと癒合した企業群の兵器研究開発のメカニズムがスカイネットという兵器体系管理システムを生み出し、やがて人類を全面的な核戦争に駆り立てていくという流れを描き切っている。
  無坊で愚かなブッシュ政権がテロリズムへの報復としてアフガンやイラクに攻め込んでいる最中に、この一連の戦争を指揮するペンタゴン=軍産複合体の愚かさを描く作品を制作していたアメリカ映画人の冷めた知性には感心せざるをえない。

次のページへ |

総合サイトマップ

ジャンル
映像表現の方法
異端の挑戦
現代アメリカ社会
現代ヨーロッパ社会
ヨーロッパの歴史
アメリカの歴史
戦争史・軍事史
アジア/アフリカ
現代日本社会
日本の歴史と社会
ラテンアメリカ
地球環境と人類文明
芸術と社会
生物史・生命
人生についての省察
世界経済
SF・近未来世界